活動ニュース

急増するヨルダンのシリア難民

 

2013/04/08
報告:シリア難民支援事業 プロジェクト・コーディネーター 小林 由佳

国境なき子どもたちは、ジャパン・プラットフォームの助成を受け、2013年3月8日よりヨルダンでのシリア難民支援事業を開始いたしました。

130408_001

キャンプ内の様子

1.事業の背景
内戦が止まないシリアから隣国ヨルダンへ避難してくる難民は、2013年に入り急増しています。ヨルダン政府の発表では3月末時点で約45万人のシリア難民がヨルダン国内で生活をしていると言われ、更に今年12月までに120万人を超える難民がヨルダンに流入すると予測されています。
現在、ヨルダンで最大規模のザアタリ難民キャンプには約17万人の難民がテント生活を余儀なくされており、そのうち半数以上が18歳以下の子どもです。難民キャンプという特殊な生活環境のもとで、避難生活を送る青少年らの抱えるフラストレーションは計り知れず、生徒同士の小競り合いなどの問題行動に繋がっていると言われています。青少年らの更なるフラストレーションの高まりやストレスの悪化を防ぐためにも、健全なストレス発散の機会や自己表現の場を提供することは緊急の課題とされています。

避難生活を送る子どもたちの話を聞くKnK現地スタッフ

避難生活を送る子どもたちの話を聞くKnK現地スタッフ

2.事業の内容<公式教育の補完・補充>
ザアタリ難民キャンプ内には、小学校・中学校を含む公立学校が現在2校開校されています。昨年11月に開校した中学校では、ヨルダンの公教育制度に準じながら、午前は女子、午後は男子に対して授業が行われています。数学や国語、英語、社会、科学、宗教、美術、スポーツの授業が行われていますが、予算不足により美術及びスポーツの資機材が不足しており、十分な授業が実施できていません。そこで、同学校の要望に基づき、キャンプ内の中学校に対して、スポーツや美術の授業の材料となる資機材の提供、および、音楽、演劇、ストーリーライティングのクラスを実施し、キャンプの公立中学校のカリキュラムを補完・補充するプロジェクトを開始します。

3.現在の難民キャンプの様子
ザアタリ難民キャンプは首都アンマンから車で1時間ほど北上したオリーブ畑の隣の荒野に設置されています。現在キャンプ内の治安は警察治安局により管理されており、約10名の保安官が第一ゲートに配置され、キャンプを出入りする人の身分証明書やキャンプ入場許可証などをチェックしています。更にキャンプ敷地内に入るのには第二ゲートがあり、そこでも厳しく身分をチェックされます。キャンプ内は露店が道の両側に軒を連ね、野菜、食料品、調味料を始め、鍋・やかんなどのキッチン用品、タバコ、毛布、石鹸などの日用品などが売られ、活気に溢れています。一見すると、人々は非常に穏やかで、一つの街が既にでき上がっているようでした。

130408_005

当団体が活動する学校は二重のフェンスに囲われており、学校の入口にも保安官が立っています。学校はプレハブ校舎にも関わらず、非常に立派で綺麗に使用され、校舎の壁にはさまざまな絵が描かれています。教室を除くと2人掛けの机に3~4名の生徒がぎゅうぎゅうに座り授業を受けている状態で、生徒の数が急増していることを確認できました。現在キャンプでは生徒数の増加に伴い、三校目が建設されています。

130408_003

プレハブ教室で学ぶシリア人の子どもたち

プレハブ教室で学ぶシリア人の子どもたち

教室の様子

教室の様子

午前の部の授業が終わり 帰宅する女生徒たち

午前の部の授業が終わり帰宅する女生徒たち

校舎の壁にはさまざまな絵

校舎の壁にはさまざまな絵

キャンプ内の学校の生徒の登録や出席を管理するノルウェーの支援団体(Norwegian Refugee Council)の報告では、キャンプ内の就学年齢に達する子どものうち、半数以上の子どもが学校に通っていないといわれています。実際に、私たちがキャンプを訪問した際も、授業が行われている時間でも学校外でたくさんの子どもがお菓子や飲み物を売っていたり、または遊んでいる姿が見られました。キャンプ内の中等部の生徒が学校へ通わない理由として、「机上の授業ばかりでつまらない」という声が挙がっており、当団体が支援する音楽やスポーツ、演劇、美術、ストーリーライティングの授業により、多くの子どもたちが学校という場所で自由に感情を表現したり、体を動かしてストレス発散できるよう、現在ヨルダン教育省やユニセフ、学校と調整を行い学校での活動の開始を急いでいます。

学校の時間にお菓子を売る子ども

学校の時間にお菓子を売る子ども

難民キャンプでの生活を余儀なくされる子どもたちが、安全な環境で学び、少しでも子どもらしい時間を持てるよう、支援活動を続けて参ります。
皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

寄付する
寄付する
資料請求

カテゴリー

月別アーカイブ