報告:パキスタン事業担当 村松さやか
2025年11月1日よりジャパン・プラットフォームの助成を受けて開始したパキスタンにおける水害支援事業の視察のため、事業担当の大竹・村松の2名で12月1日よりパンジャブ州マザファルガル郡を訪問しました。

パキスタン地図
昨年9月下旬に同国を訪れた際は気温が40度を超え、時には50度近くに達する厳しい暑さでした。今回12月1日からの訪問では、朝晩の気温が10度を下回り、現地はすでに冬を迎えていました。日差しがあるときは比較的過ごしやすく感じられましたが、太陽が雲に隠れると昼間でも肌寒さを覚えました。この地域では、これから春を迎えるまで太陽が顔を見せる日はほとんどなく曇り空の日々が続き、寒さは今後さらに厳しさを増していくそうです。
今回私たちが訪れたのは、洪水の被害を受けたチェナブ川周辺に位置する3つの村です。一面に黄色く広がるからし菜畑の向こうに、テント村の姿が見えてきました。子どもたちや村の人々は、日本とパキスタンの友情を称え、「Zindabad! Japan and Pakistan!」と声をそろえ、私たちを温かく迎えてくれました。(※ZindabadはUrudu語で直訳すると「万歳」を意味します)

被災地に広がるからし菜畑の奥にテントが見える

訪問時の様子
訪問したテント村ではすでに11月中にテントが順次設置され、併せてトイレや給水設備の整備も進められていました。そこには想像以上に小さな子どもたちが多く避難して生活していました(訪問した3ヵ所のテント村における5歳以下の子どもの人数:合計147名)。
テントが設置される以前、家族は屋根もなく今にも崩れそうな家屋に身を寄せて暮らしており、周囲には蛇などの危険も多く、夜間も非常に不安な状況の中で過ごさざるを得ませんでした。各家庭にテントが配布されると、人々はテントの前に自ら炊事場を設け、小枝を集めて火を起こし、パティを焼いたり、からし菜を炒めたりと、女性たちが日々の食事を準備していました。中には12歳で母親となった少女が調理を行い、そのそばで赤ちゃんの世話をしている姿も見られました。また日中には、ベッドを屋外に出してその上で過ごす子どもたちの姿や、少しでも収入を得るために刺繍や編み物に取り組む女性たちの様子も多く見受けられました。

編み物をする女性

テントの外で遊ぶ子どもたち
そのような中で、生後2ヵ月ほどの赤ちゃんを抱えるお母さんに出会いました。洪水後の出産について尋ねると、チェナブ川を船で渡って町の病院まで行き、出産後は再びこの村に戻ってきたとのことでした。小さな子どもたちや女性、老人が多く避難しているテント村では、汚染された水による感染症や風邪を引いてしまっても、近くに通える病院もありません。現在はテントで暮らせるようになったものの、食料も限られ寒さが厳しくなる中で生活するには依然として過酷な環境です。

チェナブ川を船で渡る住民
テント村の日常
それでも本事業の開始により、これまで地域の人々は汚染された水を手押しポンプ式の井戸から汲んで使用していましたが、新たにソーラー式の給水ポンプが設置されました。これにより、テント村に避難している人々だけでなく、周辺の被災地域の住民も含め、安全な飲料水を確保できるようになりました。

安全な水が飲めるように
それぞれのテント村には和やかな雰囲気が漂い、子どもたちが自主的に勉強する姿がとても印象的でした。しかし子どもたちが通っていた小学校(男女別校)は洪水によって倒壊し、政府の予算不足により再建の目処が立たないまま、閉校となってしまったそうです。

教科書を読んでいる様子
洪水で破壊された家屋についても、政府が義援金のような形で支援を行っている地域もあると聞きましたが、私たちが訪れた地域では政治的な理由から支援が行き届かず、住民自身が何とか生活を立て直さなければならない状況に置かれています。もともと多くの人々は畜産業や農業で生計を立てていましたが、今回の洪水によって畑は大きな被害を受け、牛やヤギなどの家畜も流され、主な収入源を失ってしまいました。
パンジャブ州はパキスタンの中でも比較的貧困率が低い州[1]とされていますが、他州と同様に農村部には貧困地域が多く存在し、自然災害や政治的要因によって格差がさらに拡大しています。今回のテント村が設置されている土地も、地主の有志によって提供されたものでした。
復興に向けて現地が今、切実に必要としているのは、医療キャンプの設置、学校の再建、そして洪水で破壊された家の再建です。一方、今回のプロジェクトで私たちが実施しているのは、被災した人々が一時的な期間生活するための冬用テントの提供や、給水・衛生設備を確保することです。現地を自分の足で歩いて感じた空気、子どもたちの頭を撫でたときに指に残った砂埃で硬くなった髪の感触。人間としての基本的なニーズが失われた現場で、私たちは事業の成果以上に、まだ解決されていない多くの課題を目の当たりにしました。ジャパン・プラットフォームによる本事業の支援は2026年1月31日まで、引き続き残りの対象地域への活動を実施します。残された期間の中で、現地の人々の暮らしの再建に向け、団体として何ができるのかを、引き続き協議していきたいと思います。

手作りの調理場
[1] PIDE Report 2021「The State of POVERTY in Pakistan」https://file.pide.org.pk/uploads/rr-050-the-state-of-poverty-in-pakistan-pide-report-2021-68-mb.pdf
※パキスタンにおけるKnKの緊急支援は、認定NPO法人ジャパン・プラットフォームの助成と皆さまからのご寄付により実施されています。







