報告:パキスタン事業担当 村松さやか
日本のニュースではあまり発信されていませんが、パキスタンでは2025年6月下旬からモンスーンの影響で洪水や土砂崩れが発生しました。特に8月中旬からはモンスーンの大雨と集中豪雨が重なり被害の範囲は広がり、およそ690万人が洪水の影響を受け、350万人が避難を余儀なくされました。(注1)
10月1日の国家災害管理局の報告によると、死者1,037人、負傷者1,067人、そして229,763戸の家屋が洪水による影響を受けました。現在949ヵ所の避難所に約15万2千人が避難し、741ヵ所の医療キャンプ(臨時診療所)では約66万2千人が治療を受けています 。(注2)

洪水により移動手段が制限される

被災した家屋
KnKはジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成を受け、パンジャブ州 に位置する深刻な浸水被害のあったサトレジ川、チェナブ川、ラヴィ川沿いの村を中心に、11月1日よりパキスタン水害被災者支援を開始します。
現地では、甚大な被害にもかかわらず人道支援は依然として十分に進まず、数千人の被災者が、浸水した道路や崩落した橋によって孤立しています。また被害の大きかった村落の多くは依然として浸水したままです。家を失った家族は、適切な避難所や生活必需品、水・衛生設備のないまま道路沿いで生活を余儀なくされています。

テントが届かない状況が続いている事業地

失われた水源
また、不衛生な環境下で感染症やマラリア、発熱等がすでに蔓延しており、地域の対応能力は限界に達しています。現在9月から12月にかけてデング熱警報も発令(注3)され 、今後、気温が6℃まで下がる越冬期を迎えるにあたり、寒さや食料不足、衛生環境の悪化による二次被害の発生が強く懸念されています。
パンジャブ州で実施された災害時のニーズ調査 (注4)では、現在420万人が洪水の影響を受け、うち約280万人が避難を余儀なくされています。同州では67,792人が避難している状況ですが、避難所の中では下痢やその他の水媒介性疾患が増加するなど、公衆衛生の状況が悪化しており、水・衛生分野における支援ニーズは依然として満たされていません。
また洪水の影響を受けた地域のうち、約85%の地域では、住民の生活の基盤であった農業や家畜、収入源が失われました。被災した人々は、将来への不安を抱えながらも、先の見えない状況の中で懸命に日々を過ごしています。
KnKは、家屋の被害が大きく、特に脆弱性の高い世帯を対象に、給水・衛生施設やシェルターの配布を行い、安全で安心な空間と、ジェンダーに配慮した衛生環境の整備を進めています。
また、物資の配布にとどまらず、提供した設備の維持管理や衛生管理に関する知識や技術を地域の人々と共有し、コミュニティ全体で持続的に生活環境を改善できるよう支援します。KnKはこの活動を通じて、人々の命と尊厳を守り、復興の基盤をつくることを目指しています。

現地調査の様子

道を補強する住民たち
(注)
1,OCHA
https://www.unocha.org/publications/report/pakistan/pakistan-monsoon-floods-2025-flash-update-11-26-september-2025
2,NDMA
https://www.ndma.gov.pk/sitrepm
3,OCHA
https://www.unocha.org/publications/report/pakistan/pakistan-monsoon-floods-2025-flash-update-11-26-september-2025
4,Rapid Needs Assessment Report – Punjab https://reliefweb.int/node/4178004







