2011/07/15
報告:プロジェクト・コーディネーター
佐藤 麻衣子エリザベス
先月在イスラマバード日本人学校にてコヒスタンでのKnKの活動を報告する講演会の機会を与えて頂きました。
この学校に通う生徒はそのほとんどがパキスタンに赴任している方々の小中学生のお子さんたち16人です。当日は保護者の方々及び学校職員の方々も講演会に参加され、KnKが行うコヒスタンでの洪水復興支援としての仮校舎建設及び復学支援の紹介とコヒスタンの人々の文化や生活のお話をさせて頂きました。最後に日本人の子どもたちにそれぞれ質問を書いてもらい、後ほどコヒスタンへ訪問した際に子どもたちに質問に答えてもらってまた日本人学校の生徒たちに報告するという、「模擬交流」を試みました。
最初にコヒスタンがどういう所なのかという紹介をしました。コヒスタンは気候も地形も険しい山岳地帯であり、他の地域との交流も限られているため民族的な文化が色濃く残り、中央政府の政策などが行き届いていないのが現状です。水道はほとんど通っておらず、子どもたちは一日に何時間も水汲みに時間を割きます。電気の供給もままならないため、日が落ちたら真っ暗になります。厳しい冬は台所で煮炊きするために起こす火のみが家を暖めているというような21世紀の日本では考えられない生活を未だにしているという話を、日本の子どもたちはどう受け止めたでしょうか。
そしてコヒスタンの識字率がパキスタンでも最低の13%と低く、考えられるその理由と低識字による問題などについて子どもたちとディスカッションしました。コヒスタニーというコヒスタン独自の言語は文字がない事からその言語の分析はおろか、他民族との交流を妨げています。コヒスタンの学校の教師のほとんどを地元からは確保できず他地域から呼び寄せていますが、生徒とのコミュニケーションの問題は生徒の学力低下の大きな要因となっています。その他にも貧しく家事手伝いが多いことや学校が近くにないため、途中で辞めてしまう児童も多く、結果大人になっても貧しいままという悪循環が起きています。識字率が低いと5歳以下の死亡率が上がり平均寿命が低いなど命の危険にも及ぶ事が報告されています。
しかし学校に行かないのが当たり前の環境で過ごしてしまうと、 学校の必要性を感じなくなり、また感じていても非識字者の場合は家の近くに学校がなくても郡当局に訴える事もなく、結果通学が困難になり辞めてしまうという悪循環が続いています。コヒスタンにもパキスタンの他地域と同じく、政府当局は最低でも各村に男女各1校ずつの小学校と中学校の配置が義務づけられていますが、全く守られていないのが現状です。女子校に至っては全く存在した事のない村がたくさんあり、男子校も小学校しかない村の方が多いくらいです。
さらに2005年の地震で倒壊した学校がまだ再建されないまま2010年の大洪水が新たに112校もの学校を押し流し、未だにKnKの事業以外でその復興作業は実施されておらず、ますます児童の学校離れの要因になっています。
勉強する場を増やすのは子どもたちの将来を考えると改善しなくてはならない大きな課題です。学校に通う子どもたちは、先生やパイロットになりたいと夢を描いているという話をすると、日本人学校の児童たちは、「私も先生になりたい」と目を輝かせて語ってくれました。夢を語る時の子どもたちの目の輝きは本当に万国共通なんですね。
最後に書いてもらったコヒスタンの子どもたちへ向けた質問は、皆それぞれ知ったばかりのコヒスタンの生活をふまえてくれました。
「何の先生になりたいのか」
「家から学校までどれくらい歩くのか」
「ウルドゥ語は読み書きできるのか」
「友だちとはどこで遊ぶのか」
「コヒスタンのどこが好きか」
「パイロットになったら日本に来たいか」 等など。
コヒスタンの子どもたちにこの質問を投げかけるとみんな最初は照れながらも元気いっぱいに答えてくれました。そして地図で日本の場所を教えるととてもびっくりした顔で、自分たちと同じ歳の子どもがこんな遠くからパキスタンに来ているのかと驚いていました。
コヒスタンの子どもたちはとても貧しく、また過酷な生活を送っています。しかし、とても明るく生き生きとたくましく生きる姿は日本の子どもたちだけでなく私たち大人も考えさせられ、勇気づけられるのではないでしょうか。
この子どもたちが大人になり、いずれ直接どこかで交流する事ができるかも知れません。
その時一体何語で会話するのかとても興味深いです。