活動ニュース

夢を実現するために、今できること/ザアタリ難民キャンプのキャリア教育

報告:シリア難民支援 現地事業総括 松永 晴子

将来の夢は?

  • サッカー選手になる
  • 小児科医になる
  • 子どもをたくさん作る
  • ふたりの男の子と、ふたりの女の子を持つ父親になる
  • 大学を出て、仕事に就く
  • エンジニアになる
  • 結婚する
  • アラビア語の先生になる

 

ザアタリ難民キャンプ、公立学校の中で授業を実施している事業の大きな目標の一つは、子どもたちが公教育に留まり、学業を全うできるようにすることです。

キャリア教育は、公立学校に来ている子どもたちに、子どもらしくさまざまな、明るい未来を描けるような手助けをすること、そして、夢を実現するために、どんなことが今できるのかを、見つめる機会を作ることを目的としています。

女子シフト、授業の様子

 

難民キャンプという閉鎖された世界に生きる子どもたちにとって、自分たちの親から垣間みる現実は、決して豊かな、自由なものではありません。4年以上支援事業を継続する中で、夢について語る子どもたちの多くが身近な人々の姿しか参考にできず、将来像を大きく描けなくなっていることを痛感してきました。

冒頭の夢は、キャリア教育の初回授業で子どもたちが表明した人生計画の中にある、彼らの夢の一部です。半数以上の子どもたちが、身近な人たちの姿、お世話になっている人たちに、自分の将来像を見出していました。

ただ、中には、独創的な計画や夢を持つ子どもたちもいます。

  • ミス・ユニバースになる
  • 象を一頭飼う
  • 有名な俳優になる
  • 弁護士になる
  • 才能あふれる芸術家になる
  • インドへ行く
  • 火星に行く

5年生から9年生までを対象としたザアタリキャンプ内公立学校での授業に参加する子どもたちは、1人1人がたくさんの、思い思いの夢を描いていました。

そこで、キャリア教育の2回目をする前に、子どもたちに宿題を出しました。

世の中にはどんな職業があるのか、身近な人たちはどんな仕事をしていて、どんなことにプライドを持っていて、どんな難しさがあって、どんな努力をしてきたのか、学年別に少しずつ内容を変えて、書いてきてもらいました。

 

宿題の紙、6年生のこの子は、小児科医になること、そして科学の知識を持った人になりたいという夢を、文章と絵で表現しています。

 

日本であれば、親御さんの仕事を紹介したり、近所で働く人たちにインタビューしたりします。

難民キャンプの中のキャリア教育にも、身近な大人たちのサポートは不可欠でした。

しかし、短期的にしか就労できなかったり、シリアでしていた仕事とは全く違う仕事に就くことを余儀なくされたりする大人がたくさんいるのが現実です。シリアでは銀行マンだった人が土木の仕事をしていたり、役所仕事をしていた人が幼稚園のアシスタントをしていたり。生きていくために誰もがお金を稼ぐ必要があるものの、仕事に生き甲斐を感じることもまた、人生の喜びの一つだとしたら、キャンプに住む大人たちの辛さもまた、容易に想像することができます。

親御さんたちが、どこまで協力してくれるのだろう。それが、キャリア教育の一番の難関です。

そこで、宿題には小さなメモをつけました。親御さん宛に、子どもたちが夢を実現できるよう、手助けをしてください、というものです。

 

宿題の紙に、親御さん向けの文章をつけました。この子は5年生、警察官、そしてアーティストになる夢を持っています。

 

キャリア教育2回目、クラスの全員が宿題をしてきてくれる、というわけにはいきませんでしたが、提出した子どもたちの書いた内容には、親御さんの思いや、近所の人たちの熱い思いがありました。

 

 

電気系エンジニアに話を聞いた9年生の宿題。細かくいろいろと訊いてきたことをびっしりと書いています。

 

「勉強を手伝ってくれる人が近くにいなくて、遠くの親戚のところまで勉強を教えてもらいに通っていた」、
「先生を尊敬してアドバイスはきちんと聞く」、
「予習をする」、
「(女性からのアドバイスには)大学を出れば、社会の一員として、人生の困難に立ち向かえるひとになる」

大人たちが子どもたちに向けて伝えてくれた言葉には、深い重みがありました。

 

授業の中では、シリア人の先生もまた、子どもたちに語りかけます。

ストーリーライティングのムハンマド・ハリーリ先生は、特に熱心に、子どもたちを前にして、自分の話をしてくれました。

 

「子どもの時は、英語が一番好きだった、14歳の時にはすでに、兄弟の面倒も見なくてはいけなかったから勉強する時間を作るのが大変だった、大学に入っても家族を助けるために飲食のチェーン店で夕方4時から12時まで働いていた。だから今、こうして学校で英語の復習授業も授業の始めにすることができるし、教師としてここで働くことができている」

 

そう話す先生の言葉を、子どもたちは熱心に聞いていました。

自分の話をするムハンマド・ハリーリ先生

 

ザアタリ難民キャンプに住み始めて、長い子どもでは、はや5年。5年住んでいれば、1年生の子は5年生になり、7年生の子は12年生になります。

12年生は大学受験の年です。キャンプの公立学校の中で大学受験資格を得られる生徒はごくわずかです。今、私たちの授業を受けている子どもたちのうちはたして何人が、大学に進学できるのか、わかりません。また、大学に行かなくても就ける立派な仕事もたくさんあります。

どんな将来を夢見ていても、そこに行き着くには過程があります。

子どもたちには、自分の夢を現実にするために何をすればいいのか、子どもたちの今、この時間を、少しでも将来を見据えて考え、行動するきっかけができる授業を、展開していきます。

 

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