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音楽の先生、サーメル先生のこと

2014/4/30
報告:プログラム・オフィサー ダナ・サレー
【シリア難民支援事業】

音楽の教師、サーメル先生のこと

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KnKの才能あふれるヨルダン人音楽教師、サーメル・アブ・ハイジャ先生は本当にとてもすばらしい人物です。彼がザアタリ難民キャンプ内の学校に一歩足を踏み入れたとたん、シリア人生徒たちがすぐに駆け寄ってくる様子をよく、目にします。そのような場面からも、彼がどれだけ尊敬されているかが分かるでしょう。
そこで、彼にいくつかの質問をしてみました。

Q.どうして音楽を勉強しようと思ったのですか、また音楽の先生になったのですか?
私はただただ音楽が好きで、たとえ路上だろうと、できるところならどこででも、音楽を教えたくなるぐらい、教えることも好きなのです。ムスリムはとかく音楽を罪なものだと思いがちだけれど、そうではないんだ、ということを伝えたいのです。

Q.難民キャンプで教えるのはいかがですか?
キャンプでの授業は難しい場面に直面することが多くあります。そんな状況なので、音楽を愛してい なければ、とても音楽を教えることはできないでしょう。ここの子どもたちは精神的にも肉体的にも疲れています。だから、私がここ、ザアタリ キャンプに来ることで、少しでも子どもたちの暮らしを明るくできれば、と思っています。考えてみてください。もし二度と歌が歌えなかったら、どんな敬虔な信仰心を持った人でも、つらいでしょう。音楽はすべての人の一部なのだから。イスラム教のコーランには、音楽的な音程があります。音楽は赤ちゃんから100歳のご老人まで、どんな人の周りにもあります。音楽は美しい、ということをただみんなに知ってほしいのです。”もし心配事が増えてしまったら、それを歌にしてしまえ”という言葉にもあるように。

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Q.キャンプの子どもたちとどのように接していますか?
子どもたちが本当にしたいことを汲み取ってあげなくてはならない、と思っています。ある子どもたちは歌を歌いたかったり、ある子どもたちは楽器を演奏したかったり、といろいろです。 初めて子どもたちと仕事を始めたとき、全員がそろって”なんて恥ずかしい”という”ヤ ヘイフ”という曲を歌いたがりました。それはほとんどの生徒たちの出身であるダラーという街と政権についての歌でした。この歌を歌うと彼らは故郷を思い出し恋しがります。だから、この曲は彼らの気持ちを外へ表現する手段となっているのです。
幸せな歌を歌えば、悲しくなるはずがありません。心の内側からやってきたもの、今の自分の気持ちを映し出しているもののはずなのです。

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誰もが自分の痛みを歌っている

Q.生徒と接していて印象に残ったことがありましたか。
ちょうど二日前、音程の授業をしていたとき、KnKの発表会でコーランの暗誦を発表するはずだったナジールという少年がいました。彼のおじさんは2週間前にシリアで殉死しました。 音楽の授業の中でアドハー(祈祷の呼びかけ)の音階を教えていたとき、彼は顔を手で多い、涙を流し始めました。 どうしたの?と尋ねたところ、おじさんを思い出したんだ、と言いました。

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5年生の授業の中でも、同じような場面がありました。5年生女子のクラスで何が歌いたいか尋ねると、”お母さんとあかちゃん”、という曲が人気です。クラスのみんなが歌い始めてまもなくすると、一人の女の子が泣き始めてしまいました。何かあったのか、と尋ねて見ましたが、彼女は答えようとしませんでした。後日、他の先生から聞いたところによると、彼女のお母さんが少し前にお産をして、赤ちゃんが死産だった、ということでした。 次にそのクラスに授業へ行き、また子どもたちのリクエストに答えようと、同じ曲を歌い始めたところ、その少女はやめて、と叫び始めました。そこで、すぐに曲を変えることにしました。

Q.以前勤めていたヨルダンの私立校とシリア難民キャンプの学校では、授業にどんな違いがありますか。
まず、ヨルダンの公立学校には音楽の授業がありません。だから、ここではとても素敵なことをしていて、子どもたちを笑顔にすることができる、と思っています。 私が勤めていた私立の学校の子どもたちはずいぶん違っていました。とても豊かな家庭に育っています。1教室も25人程度と少人数で、教室内もカラフルに彩られ、どの生徒たちにも、心地よく過ごせる 空間でした。

しかし、キャンプの子どもたちは、より私のことを必要としてくれている、そう感じます。私は、どんなささいなことでも、幸せを感じられるものを必要としている子どもたちを、幸せにしたいと思っています。授業はたった35分であっても、彼らが笑顔になってくれるのなら。
それから、もう1点付け加えることがあります。音楽がきらいだ、と公言するような人は、自分で自分自身を神の恩恵から遠ざけている、とそう思うのです。

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生徒が描いたサーエル先生

※ヨルダンにおけるシリア難民キャンプでの支援活動は、ウエストフランス・ソリダリテからのご寄付と日本の皆さまからのご寄付で運営されています。

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