活動ニュース

村の若者の自立に向けて

2010/07/23
報告:プロジェクト・コーディネーター 岩城 美奈子

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【村の若者の自立に向けて:服飾専門家からのトレーニング】
バングラデシュでは職業訓練施設の卒業生をメンバーとした共同組合を設立し、職業訓練にて習得した技術を活かした品物を市場に販売し収益を得ることで、将来村民が経済的に自立できることを目指しています。共同組合は支援の対象とするカマルカティ村で4月よりスタートしましたが、制作する品物の品質は改善すべき点がまだまだ多く、専門家による技術的な指導をまだ必要としています。組合員の技術力向上と市場販売のための知識を得るため、ダッカの現地協力団体であるSociety for Underprivileged Families (SUF)にて行われたトレーニングに参加しました。

トレーニングは6月13日から15日の3日間に渡り、オーストラリアにてInfinity Cottageというフェアトレード会社を経営するJillさんが開催し、SUFや他事業地のインストラクターの他、ネザラバードからは共同組合員の生産グループ、裁断・デザイングループから各1名と各裁縫教室のインストラクター4名の計6名が参加しました。

トレーニング参加者

トレーニング参加者

参加者による自己紹介

参加者による自己紹介

Jillさん(左)による紹介

Jillさん(左)による紹介

参加者による意見交換

参加者による意見交換

初日は参加者の自己紹介とトレーニングで学びたいことについての意見交換から始まりました。参加者からは、「市場販売を行う際にどのような技術が必要になるのか」「技術と生産スキルのレベルアップや、デザイン、品質管理、値段の設定方法を学びたい」という声が挙げられ、Jillさんからは全ての衣服仕立て業にて品質向上が最も重要であることが伝えられました。
トレーニングの内容は主に以下の分野にてまたがっています。

1.布の選定  2.配色  3.デザイン  4.価格設定  5.市場販売

1.布の選定
服飾を販売する際、まず重要になるのは布の選定です。参加者に3つのタイプの布を配布した上で、それぞれどの素材が使われているのか、そのタイプの布でどのような服が作れるのか、配色は何色が合うのか、という質問を投げかけました。布のタイプを選択する時点で既に利益が上がっているため、選定は慎重に行われなければいけません。

選定する3枚の布

布の選定に懸命な共同組合の インストラクターと組合員

布の選定に懸命な共同組合の
インストラクターと組合員

布の識別の結果をJillさんに確認

布の識別の結果をJillさんに確認

2.配色
布の選定に伴って大切なポイントとなるのは配色の選び方です。市場での色の好みは年によって違うため、その年ごとの流行の色を事前に調査すること、常にデザインの移り変わりに敏感であることが大切です。また、シャツ等を制作する際に気をつけなければいけないのはボタンの選定です。ボタンの色、サイズが衣服と合っているかどうかを見極めることの大切さが伝えられました。

色とりどりのボタンから素材に合うものを識別

色とりどりのボタンから素材に合うものを識別

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ボタンを選定する参加者

ボタンを選定する参加者

3.デザイン
デザインを設定する上で、どのようなデザインを施すかを詳しく記入した明細書を作成する必要があります。明細書を作成する際にまず指摘されたのはサイズの設定です。服飾をデザインする際、全てのサイズが完全に統一されていること、最も多く売れるサイズは品数を多めに作成すること、またどのような顧客の層をターゲットにするかによってサイズが異なってくることが挙げられました。生産する数が増えてもデザインやサイズを統一するため、この明細書にはデザインの詳細を一つ一つ正確に記入することが必要になってきます。
説明の後には参加者に空白の明細書が配られ、各自でデザインを記入してもらいました。

明細書を作成する共同組合員

明細書を作成する共同組合員

裁縫教室インストラクター、 ディナ作成の明細書

裁縫教室インストラクター、
ディナ作成の明細書

共同組合員作成の明細書

共同組合員作成の明細書

裁縫教室インストラクター、 シャミマの明細書

裁縫教室インストラクター、
シャミマの明細書

それぞれでデザインを考えた後はサンプルルームに移動し、型紙を用いて布の裁断を行うトレーニングが行われました。裁断の時点では、ペンや鉛筆でなくチョークを使用すること、2枚のパーツを同時に切る際に下側の生地がずれないように注意して裁断することが大切です。裁断方法に加えてアイロンの使用方法についてもアドバイスされました。

型紙を使った裁断

型紙を使った裁断

マーキングと裁断を実践する参加者

マーキングと裁断を実践する参加者

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4.価格設定
デザインに関連して重要視されるのは価格の設定です。ネサラバードでの共同組合で制作されたサリーをサンプルとして持参し、SUFの服飾インストラクターが制作したサリーとの比較が行われました。

共同組合員によるサリー:デザインは綺麗だが飾りが重い

共同組合員によるサリー:デザインは綺麗だが飾りが重い

SUFインストラクター作成のサリー: 飾りが軽く、生地も通気性が良い

SUFインストラクター作成のサリー:
飾りが軽く、生地も通気性が良い

共同組合員によって制作されたサリーは一見デザイン性があり生地が軽いという利点はあるのですが、デザインに使っている飾りが重く、生地も通気性が良くないという失点が指摘されました。労働料をとっても、2人の組合員により1日7時間、計14日間かけて制作していることを見ると、結果として1人頭1時間の労働料は8タカ(約10円)の収益しか上がりません。市場販売の際の基本的な見積もり計算の仕方について伝えられましたが、計算方法を毎回適用することはなくとも、労働料を見積もりの計算に入れておくことは常に必要であり、労働価値を公平に追求することが求められています。

5.市場販売
市場にて生産した品物を販売する際に重要になってくるのが包装です。生産したものを品質管理に回し、最後の仕上げとしてアイロンがけを行ってから丁寧に包装を施せば、6ヶ月間は保管できるそうです。バングラデシュでは箱に入れて販売するケースがありますが、これは鋲を使って品物を箱に固定するため、品質が下がり良くないということ、また梱包の量が増えれば多くの品数を保管できないということから、包装の手段としてあまりお勧めはされないようです。紙やビニールに包んで包装すれば十分、最近では環境問題への配慮からエコバックに入れて受け渡すことも歓迎されているということでした。
また、包装の際に忘れてはならないのは品質表示やブランド名、ロゴの貼り付けです。特にブランド名や会社・組織のホームページ等の連絡先を提示しておけば、次に顧客が同じお店での購入を求めたときにすぐに分かり、結果として顧客数を増やすことに繋げられるためJillさんからお勧めされました。
顧客数を増やす方法としてもう一つ欠かせないのは広報です。インターネット上での紹介やリーフレット、看板を出して紹介することで、より多くの顧客を呼び込む必要があるということです。

3日間に渡るこのトレーニングではフェアトレード会社を経営する専門家によるアドバイスを頂けたこともあり、参加者の満足度は非常に高いものでした。共同組合を運営していく中でもこのトレーニングの内容を他のメンバーと共有し、より品質の高い生産を目指していけるように取り組んでもらえたら、と感じています。

 

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