2010/05/27
報告:プロジェクト・コーディネーター 岩城 美奈子
【子どもクラブ】
チルドレンセンターの「子どもクラブ」では、子どもが主体となり子どもが受けるべき権利や児童労働などの直面している問題について議論し、社会で生きていくために必要なスキルを身につける場が提供されています。前月、子どもクラブのメンバーに対する生活基盤向上のためのトレーニングが施されましたが、受けたトレーニングの内容を他の子どもたちと共有する場が設けられました。共有されたトレーニングの内容は多岐に渡り、子どもたち同士で熱心に議論を広げる場が見られました。
議論された主な議題
5つの基本的な権利について
食事、住居、教育、衣服、愛情は子どもたちが持つべき基本的な権利
早婚
18歳未満の子どもの結婚について言い、家庭内の衝突や母子の身体に対する悪影響、長期間に渡り出産の機会があるため結果的に多くの子どもを生み飲食を供給できなくなることなどの問題がある。また若年層での出産は母子子どもの死亡率を高める危険性があるということを議論
重婚
二度以上に渡り結婚を繰り返すことを言い、女性の間での争いや子どもを多く生むことにより飲食を供給できなくなる
健康管理
下痢になる原因、対処方法について
児童労働
家族が子どもに対して家庭内収入を依存するようになれば、それは児童労働と呼ばれ、識字率の低下や精神的な苦痛、労働先の家庭からの暴力を受けるといった悪影響がある。子どもや女性に対する搾取の面でも、長時間に渡る劣悪な労働環境、食事が与えられない、セクシャルハラスメントが繰り返されている
子どもの権利
親に養育される権利、自由に意見を発言する権利、教育を受ける権利、児童労働から保護される権利などについての意識共有
子どもの権利に関するワークショップでは、まずCWGメンバー一人ひとりにカードが手渡され、そこに子どもの権利とは何であるかを記入、のちにそれぞれが発表し意見交換を行いました。
議論の他には子どもクラブのメンバーによる劇が披露されました。劇ではクラスの女の子が抱える一つの問題を想定し、皆で意見を出し合います。女の子は明日までに500タカ(約650円)を支払わなければいけないが、彼女には今お金がない。近隣都市であるボリシャルに住む友人が支援してくれるが、ボリシャルまで行くお金もなければ、携帯電話も銀行口座もない。
この場面に対して皆で意見を出し合い「チルドレンセンターの先生に相談して支払いを遅らせてもらう」という提案が出ました。
児童労働に関する議題では、ある村の親子が人から良い話を聞かされて子どもを都市に送るものの、都市に着いてから他の業者に売り飛ばされ、他人の家で家事労働に就くとい場面を想定します。親は自分の子どもがどこで何をして働いているのか、いつ帰ってくるのかも分からない。子どもは家政婦として働く中で家庭からの虐待や過酷な労働、家の子どもは愛されているが自分は愛されていないという精神的な苦痛を味わうことになる。
劇の中では児童労働に従事する中で強いられる精神的な苦痛や暴力のあり方が現実味を帯びて演じられ、子どもたち自身が児童労働の及ぼす影響を理解していることが見受けられました。 また、健康管理についてはきちんとした医療知識を持ち合わせていないのに、医療行為を行う村のやぶ医者についての劇が行われ、きちんとした病院に行くことの大切さについての知識が共有されました。
この劇では言語障害を持つ露店商人が町の人にからかわれる場面を再現し、言語障害を持つ人への差別をしてはいけない、という知識を共有しました。
これらの劇を演じて具体的な問題について考えることは、子どもたちが自分の持つべき権利を認識できると共に、自分自身で問題解決案を考えるトレーニングとなります。その他にも、ペンを使って全員が違った表現をする、雨音を拍手の音量で現すなどのゲームを通じて創造性を養うためのトレーニングが共有されました。 先生ではなく子どもたちによる指揮の中である問題について意見を交わすことは、子どもの権利に対する認識を深めるだけでなく、公の場で自由に自分の意見を発言する力や自分でものを考える力を育むという利点があります。こうした場は子どもたちが将来より良い社会で生きていくために必要とされる機会となり、今後も子どもたちが自発的に意見交換の場を持てるようにできる限りの協力をしていきたいと考えています。