2011/08/02
報告:プロジェクト・コーディネーター 平 果林
2007年にバングラデシュ南部を襲ったサイクロン・シドルの被災村であるカマルカティ村、ジョラバリ村、アシュア村から、最近の協同組合の活動状況についてお伝えします。 KnKでは、2008年より上記3村を含めたサイクロン被災村5村で、外務省の日本NGO連携無償資金協力を受けて、足踏みミシンを使った縫製職業訓練センター(4村)と伝統的な機織り職業訓練センター(1村)を運営しています。
職業訓練センターは、主に村の未婚/既婚女性を対象に指導していますが、閉鎖的な村社会においては、女性の自立やエンパワーメントはとても難しく、KnKの活動はこうした村の女性たちの自立に大きく貢献しています。
たとえば、職業訓練センターに通い始めたころは家から出る機会も少なく、ミシンの使い方すら知らなかった女性たちが大半ですが、半年から一年後には、子ども服やサリー、サロワカミュースといった伝統的な衣装を立派に作れるようになり、近隣の知人・友人などからオーダーを取って現金収入を得るまでに成長しています。
そこで、こうした卒業生を対象に、彼女たちが作った子ども服や伝統衣装、小物などをローカルマーケットで売ることを目指して、2009年から順次、「協同組合」を各村に立ち上げています。現在のところ、カマルカティ村、ジョラバリ村、アシュア村の3つ村で各20名から30名の卒業生が協同組合に加入し、現金収入の機会を得ています。
協同組合立ち上げ当初は、どんなデザインの子ども服なら小売店に買ってもらえるか、あるいは、縫製の品質はどうあるべきか、卸値はいくらに設定するべきか、といった市場経済のルールについてほとんど知識のなかった村の女性たちでしたが、立ち上げから2年目を迎え、少しずつ意識も向上し、製品の品質も上がってきています。
また、今年4月には、品質管理やデザインを学ぶ5日間の集中トレーニングを首都ダッカで実施しました。縫製インストラクターと協同組合の代表者計7名が参加し、基本的なミシンの扱い方から、子ども服用のレースの付け方などの講習を受けたほか、電動ミシンを使ったボタンホールの開け方や男性用のYシャツ作りにも挑戦しました。ちなみに、村の訓練センターにはまだ電気が来ていないため、電動ミシンに触ることが初めてだった女性たちも何人かいました。この集中トレーニングに触発され、4月以降、子ども服のデザインも飛躍的によくなってきています。
また、今年度からは、協同組合の活動をバックアップするために、マーケティングオフィサーとして首都ダッカからソフィーク氏という敏腕セールスマン兼マーケッターも参入し、協同組合が作った商品の販売促進に専念してもらっています。
一方、伝統的な機織り訓練センターでも、新た織りの挑戦が始まっています。現在は「ガムサ」と呼ばれる伝統的な綿布を織っていますが、今後は日本のマーケットをにらみ、シンプルで質感のある生地を織ってみようと試作を繰り返しています。写真のクッションは、その試作第一号ですが、手織りならでは風合いが出ていて、なかなかいい仕上がりになりました。手織りの温かみとコットン100%のテイストを生かして、今後、さらにエコバックなどの生地作りに挑戦したいと思っています。サイクロン被災村から発信する手織りのクッションやエコバックが日本にもお届けできたらと、メンバー一同、期待に胸を膨らませている今日この頃です。