2014/11/18
報告:プロジェクト・マネージャー 原 理栄子
ミャンマー(ビルマ)連邦共和国の南東部に位置するカレン州では、2012年まで約60年もの間、国軍と反政府勢力との間で闘争が繰り返されていました。紛争は、人々を慣れ親しんだ土地から追いやり、彼らは難民や国内避難民としての生活を強いられただけでなく、長年の間故郷に戻ることができずにいました。2012年1月にはカレン州全土において政府と反政府勢力であるカレン民族同盟(KNU)の間で停戦合意が結ばれていますが、紛争の影響で社会サービスやインフラは放置された状態が続いたため、同州内の学校や病院等では建物の老朽化が多く見受けられます。難民、国内避難民として逃げていた人々が、今後故郷への帰還を望む際には、社会全体で彼らを迎え入れるための生活環境を整備する必要があります。
このような背景を受け、KnKはカレン州コーカレー地域内の学校にて、老朽化の進む校舎の修繕、必要数に達していない、もしくは破損していて使用できなくなっている、机、椅子、本棚などの教室に設置するための教育資機材を提供しています。 既に修繕工事が始まっている学校の子どもたちからは、「屋根が直ればもう傘をさしながら勉強することなんてないね!」、「教室の仕切りがあれば、下の学年の子たちが走り回らなくなって勉強に集中できる!」など、早速喜びの声が聞かれました。天井の修理にはこれまでに使用されていた腐敗しやすい木の皮や草などの代わりに、断熱シートを導入します。風通しの悪い、蒸し風呂のような教室の中で勉強せざるを得なかった子どもたちにとっては、快適に勉強できるようになるに違いないと現地スタッフは言います。 修繕工事が各学校で終了する際には、校舎や学校敷地維持にかかる管理体制を強化するべく、学校関係者や生徒に対し、説明会も実施する予定です。
老朽化した学校を修繕することは、紛争から逃れていたカレン州の人々を迎えるための準備といった目的に限ったことではありません。先に述べるように、学習環境が改善されれば、現在コーカレー地域に在住している子どもたちの勉強に対する意欲も一層駆り立てることになり、不登校・中退率の低減や中学校、高校への進学率の上昇につながるとも考えられます。現地政府内の教育担当者からも、KnKの事業は子どもだけでなく、これまで安全面で設備の整っていない学校には通わせたくないと思っていた子どもの親に対しても働きかけることになり、小学校への入学率が毎年99%に達しはするものの、約3割の子どもたちが基礎教育を終えられず中退していく地域内の教育現状の改善にもつながるだろうとのご意見をいただきました。
KnKは今後も活動を実施する中で、子どもたち、保護者や先生方、またコミュニティー内で教育問題の解決に取り組む住民の方々の声に耳を傾けながら、現在コーカレー地域に暮らす子どもたち、また近い将来コーカレー地域に移り住むことになるかもしれない、過去に紛争から逃れた家族の子どもたちのために教育環境を整備して参ります。