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【カンボジア】紛争で奪われる日常、守りたい学び―カンボジアからの声

報告:カンボジア プロジェクト・コーディネーター 武田望

カンボジア派遣員の武田です。現在カンボジアとタイの紛争が激化しており、多くの子どもたちの生活や教育が脅かされています。日本のニュースではあまり現状が報道されていないと聞いていますが、今回現地で活動する派遣員として、KnKの活動や、活動地の人々の様子、そして私たちと一緒に働く現地スタッフが、この紛争の中でどのような思いを抱きながら活動しているのかをお伝えしたいと思います。

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現在の状況について

タイとカンボジアの国境紛争は、2025年7月にプレアヴィヒア州で発生した衝突をきっかけに激化しましたが、ASEAN議長国のマレーシアや米国の仲介があり、5日間で一度停戦が実現しました。10月26日にはタイ・カンボジア政府双方が停戦合意の履行に向けた共同宣言に署名し、市民の間には、少し状況が落ち着くのではないかと安堵の空気も広がっていました。

しかし、停戦合意がなされたにもかかわらず、12月7日(日)からプレアヴィヒア州及びオッドーミンチェイ州の国境地帯での軍事的措置により再び情勢が悪化、8日(月)には大規模な軍事衝突に発展しました。北部2州だけでなく、KnKが事業を行っている北西部のバンテアイミエンチェイ州やバッタンバン州、その他ポーサット州などの係争地でも激しい戦闘やタイ軍からの空爆が行われています。

KnKの事業地であるトゥマポーク郡およびプレアネットプレア郡でも、市民が暮らすエリアの近くで空爆が行われました。生涯学習センター(ライフ・ロング・ラーニング・センター、LLLC)に通う生徒や講師、そしてKnKスタッフも、空爆の音を聞いたり、バンテアイミエンチェイ州内やバッタンバンやプノンペンへ避難を行ったりなど、刻一刻と変わる状況を注視しつつ、自身の安全を確保しています。

 

不安定な状況下での活動

こうした状況の中、子どもたちの学びが一時中断される状況が続いています。

2025年12月15日にカンボジア教育省が発表した情報によると、国境に隣接する6県で合計1,039校が閉鎖され、242,881人の生徒が学校に通うことができなくなっています。

カンボジア教育省のFacebookより

カンボジア教育省のFacebookより

KnKがバンテアイミエンチェイ州で運営している生涯学習センター(ライフ・ロング・ラーニング・センター、LLLC)について、周辺地域での治安悪化を受け、トゥマポーク郡LLLCでは12月9日(火)から、プレアネットプレア郡LLLCでは12月16日(火)から、職業訓練コースを一時中止しています。訓練生の一部は、安全が確保できるよう、避難を続けています。

また、LLLCの同等性教育クラスに通っていた子どもたちは約半年間のコースを修了し、11月に無事公立学校に入学しましたが、通学を始めてから約1ヶ月で、また学校に通うことが難しくなってしまっています。生徒の現状について、KnKチームとして現在フォローアップを行っています。

11月に公立学校に編入し、制服を受け取った同等性教育クラス卒業生の子どもたち

11月に公立学校に編入し、制服を受け取った同等性教育クラス卒業生の子どもたち

さらに、バッタンバンで実施している「若者の家」事業については、状況を注視しつつ、緊急事態に備えて子どもたちや保護者との連絡手段などを確認しています。

 

カンボジア人スタッフの思い

このような状況の中でも、スタッフはLLLCの運営委員会や職業訓練の訓練生、トレーナー、行政の担当者などと連絡を取り合いながら、自分たちに出来ることを探し、支援を続けています。

バンテアイミエンチェイ州のオフィスから治安悪化のため移転したバッタンバンの仮オフィスの様子

 

プロジェクトマネージャーのウーサ(中央)

プロジェクトマネージャーを務めるウーサに話を聞きました。

―いまの状況で、何を最優先にして仕事をしていますか。

私たちが一番大切にしているのは、KnKが支援している人たちが安全に過ごせているかどうかという点です。そのため、できるだけこまめに連絡を取り合いながら、状況を確認し、情報を集めています。そして、その中で今の私たちに何ができるのかを考えています。

同時に、現在実施の最中である職業訓練コースの運営についても見直しているところです。不安定な状況が続くと、どうしても訓練生のモチベーションが落ち込みやすくなるため、コースをどのように続けていくか、また講師と受講生のつながりをどう保つかが課題になっています。

そこで、状況に応じてオンラインでのセッションも取り入れながら、無理のない形で学びを続けられないか検討しています。顔を合わせる機会が少なくなっても、つながりを感じられることが大切だと考えています。

 

―紛争の状況、そして周りの人たちの様子はどうですか。

国境沿いの地域から少し距離があるので、紛争が起きている地域の状況を、リアルタイムで理解するのがとても難しいです。また、実際の状況や人々が感じていることを自分が感じることも、難しいです。

ただ、私の家の近くには、避難してきた家族が暮らしていますが、安心して過ごせる住まいを見つけるのがとても難しい状況のようです。避難の際には、衛生用品や食料など、必要な物資を十分に持ち出すことができず、また適切な滞在先が見つからず、限られた部屋の中で身を寄せ合って生活している人も多く、蚊が多い環境で過ごさざるを得ない状況です。また、避難している子どもたちは学校に通うことが出来ていません。

 

―最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

カンボジアに平和が訪れることを祈っています。

 

このような不安定な状況の中でも、KnKは子どもたちの学びと安全を守るため、できる限りの活動を続けています。

現地の声に耳を傾けながら、一人ひとりに寄り添った支援を続けていくためには、皆さまのご理解とご協力が欠かせません。引き続き、ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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