報告:カンボジア プロジェクト・コーディネーター 後藤ゆき奈
カンボジア派遣員の後藤です。前回の武田派遣員の報告「【カンボジア】紛争で奪われる日常、守りたい学び―カンボジアからの声」(2025年12月17日)に引き続き、タイとカンボジアの国境紛争の状況やKnKの活動への影響、避難を経験した私たち派遣員の思いなどをお伝えしたいと思います。
前回記事の12月17日(水)以降もタイとカンボジアの国境紛争は収束せず、北部・北西部3州で爆撃が継続しました。さらに12月24日(水)には、外務省が定める危険地域(国境50km圏内)を越えたバッタンバン州バナン郡にも計6発の爆弾が投下されました。

KnKの活動地2州の地図
爆撃地はKnKの自立支援施設「若者の家」からわずか14kmの地点でした。その後も爆撃は続いていましたが、12月27日(土)の国防大臣級会合において、タイとカンボジア両国が停戦に合意しました。停戦合意後、状況は落ち着きを取り戻しましたが、現在も国境付近では緊張状態が続いています。
以下、KnKの事業や現地の子ども・若者たちへの影響と、KnKの対応についてまとめます。
バンテアイミエンチェイ州の職業訓練コース~現在も避難を続ける受講生がいる
2ヵ所の生涯学習センター(ライフ・ロング・ラーニング・センター、LLLC)の職業訓練コースを一時中止していましたが、プレアネットプレア郡では、12月22日(月)からコース時間を短縮して再開しました。国境に近いトゥマポーク郡のセンターは12月27日(土)の停戦合意および公立学校の再開を受け、1月5日(月)から再開しました。
コース中断中も受講生のモチベーションを維持するために、12月25日(木)にはオンラインコースを実施しました。プレアネットプレア郡のセンターは、12月30日(金)から時間を通常通りに戻しコースを再開しています。

エアコン修理コースの様子

美容訓練コースの様子
今回の紛争再燃により、受講生や講師の多くが避難を余儀なくされました。中には、州外へ避難した受講生や講師もいました。KnKチームは連絡を密に取り、安否確認だけでなく、将来の希望を失わないように励まし続けました。現在は、トゥマポーク郡、プレアネットプレア郡両センターの各コースにおいて、受講生の出席が約半数に留まっています。引き続き、欠席が続いている受講生に対してフォローアップを行っていきます。
また、生涯学習センターで行っていた同等性教育クラスに通っていた子どもたちは、公立学校の休校や避難により学校に通うことが難しくなっていましたが、KnKチームがフォローアップを行い、トゥマポーク郡、プレアネットプレア郡両センターの子どもたちが公立学校の再開に合わせて登校または職業訓練コースへ参加していることが確認できました。
バッタンバン州「若者の家」~突然の爆撃で、子どもやスタッフ、そして私たちも避難
12月24日(水)の爆撃を受けて、子どもたちはみんな家族の元へ一時避難しました。爆撃の情報を受け学校から「若者の家」に戻ってきた子どもたちの額には汗が見え、動揺・困惑している様子でした。12月29日(月)に教育省より、30日(火)からの学校再開が発表されたことに伴い、子どもたちは29日(月)に「若者の家」へ戻り、現在は日常を取り戻して学校に通っています。
爆撃があった日、KnKスタッフは「若者の家」周辺での戦闘機の音とSNSの情報から空爆を察知し、直ちに子どもたちの安否確認を実施しました。日頃の緊急連絡網の備えにより速やかに連絡がついたものの、交通手段の確保が困難な家庭もあったため、スタッフが配車を手配し、スタッフ同行のもと、一人一人無事に家族のもとへ送り届けました。29日(月)に子どもたちが「若者の家」に戻ってきた後、生活環境や精神面を支えるためにカウンセリングやフォローアップを行いました。

爆撃の後、学校から「若者の家」に戻ってきた子どもたちの様子
現地スタッフについては、親戚や家族など、避難先を確保できたスタッフは国境付近を離れ安全な場所に避難しました。そして私たち派遣員は12月24日(水)に首都のプノンペンに避難しました。家庭の事情等により避難が難しく、連日爆撃音が響く地域にとどまらざるを得なかったスタッフもいました。心理的にも非常に過酷な環境下ではありましたが、毎日お互いの安否を確認し合いました。
子どもたちの夢や目標が紛争によって脅かされてはならない
現在、バッタンバンの街は以前の活気が戻り、マーケットやカフェなどでも人が行き交う様子がうかがえます。バンテアイミエンチェイ州の方も、街の様子が以前の状態に戻っているという報告を現地チームから受けています。一方で、市内では一部のタイ資本の店舗が撤退し、特定の製品に対するボイコットの動きが見られるなど、両国間の緊張関係が市民の行動にも表れているように見受けられます。
日本では馴染みの薄い「空爆」や「爆撃」という言葉が、日ごとに迫りくる恐怖や不安として身に染みた日々でした。現地チームを置いてプノンペンに避難することにも申し訳なさを感じましたが、あのような極限状態でも派遣員を気遣ってくれる現地スタッフの温かさに救われました。また、自身も困難な状況にありながら、子どもたちの安全と学びの機会を守ろうと対応に当たってくれた姿に、改めて尊敬しました。

避難時に目撃した荷物を積んだ車
現在は、安全管理を強化すべくチームで緊急時の対応手順や連絡フローなどの改訂を行っています。また、スタッフだけでなく子どもたちにも緊急時の判断や安全管理の意識を高めてもらうために避難訓練も実施する予定です。
国境の緊張はまだ続いていますが、子どもたちの夢や目標が紛争によって妨げられることがないよう、できる限りの活動を続けてまいります。そして、そのためには皆様からのご支援が欠かせません。引き続き、ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。
子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています

3,000円で、カンボジアの青少年1人に「若者の家」での生活と街の高校で学べる教育費10日分を提供できます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。






