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【友情のレポーター30周年】千夏とマラックの手紙 / 2014年ヨルダン取材

1995年にスタートした「友情のレポーター(旧 子どもレポーター)」は、今年で30周年を迎えます。これまで、紛争や感染症のまん延などで、実施を見送った年も数回ありますが、一般公募で選ばれ、海外事業地を取材したレポーターは、開始から30年で総数70名となりました。
今回、30周年を記念し、元レポーターと現地で交流した当時の子どもたち、双方による手紙を通じて、「友情のレポーター」参加後に彼らがどのように成長し、このプロジェクトがどのような役割を果たしてきたかを紐解いていきます。

本日、「世界難民の日」にお送りする第一弾は、第29回「友情のレポーター」(2014)として、ヨルダンのザアタリ(シリア)難民キャンプを訪問した佐々木千夏さん(当時16歳)と、当時取材に応じてくれたマラックさん(当時13歳)との最近の手紙/往復書簡をご紹介します。千夏さんは、2017年にもマラックさんに会いに行きました。

取材当時のふたり(2014年3月)

千夏さんからマラックさんへ

元気にしていますか?

私は日本で毎日一生懸命に働いています。
ときどきアラビア料理を食べに行くこともあるけれど、やっぱりあなたのお母さんの手料理には敵わないよ。本当に今まで食べた中で一番おいしかった!今でも時々思い出します。
いつかまた、あなたに会いに行けたらいいな。
距離は遠くても、きっとまた会えると信じています。

半年ほど前、日本のテレビでシリアのニュースを見ました。画面を見ながら、あなたやあなたの友だちは大丈夫だろうかと、とても心配になりました。政治のことはあまり詳しくないけれど、あれから何か変わったのでしょうか。あなたや地域の人たちの暮らしが、少しでも良くなっていることを心から願っています。

ところで、将来はどんな仕事をしたいか決めましたか?あなたの知性と決断力があれば、きっとどんな夢でも叶えられると思います。あの困難な状況の中でも勉強を続ける姿を、私は本当に尊敬していました。あの環境で学校を卒業したというのは、それだけでも誇りに思うべき素晴らしいことです。

これからのあなたの人生が、幸せで満たされますように。もうすでにたくさんの困難を乗り越えてきたあなたには、きっと素敵な未来が待っているはず。どうか元気でいてね。そして、いつか必ずまた会いましょう。

あたたかな想いをこめて。

佐々木 千夏

マラックさんから千夏さんへ

こんにちは、私の美しいお姉さん

私たちの間には遠い距離があるけれど、あなたはいつも私の心の中に近くにいます。
いつかまた会える日が来ることを、心から願っています。

実はね、私はいま料理がとても得意になったんです!ぜひヨルダンに来て、私の手料理を食べてほしいな。そして私は、あなたの国の「お寿司」を食べるのをすごく楽しみにしています。

シリアの状況についても、ようやく明るい話ができるようになりました。
2012年にシリアを離れてヨルダンのザアタリ難民キャンプで暮らすことになった頃は、本当に苦しい毎日でした。あなたが私を訪ねてくれたとき、あの生活の一部を経験したと思います。私たちは、祖国の危険から逃れるために、仕方なく避難生活を送っていたのです。
でも今、私たちの革命は勝利し、シリアは自由な国になりました。私は祖国に戻って、もう一度そこを築き直したいと強く願っています。
ただ、今すぐに帰ることはしません。まだ完全に安全とは言えず、治安や経済、水、電気…さまざまな面で安定するまでには、あと1年ほどはかかると思っています。

私はビジネス・マネジメントの学士号を取得し、2024年8月に卒業しました。このことをとても誇りに思っています。今はキャンプの中にある団体で働いています。

正直に言えば、自分の持っている力や可能性はもっと大きいと感じています。もっと広い世界で働けたら…と願うこともありますが、今はこの場所でできる限り前向きに過ごしています。そして、いつも笑顔でいるようにしています。

何年もの時を経て、こうしてあなたが連絡をくれたこと、本当にうれしかった。あなたのおかげで、たくさんの美しい思い出がよみがえりました。
今度は、一緒に新しい思い出をつくれたらいいな。

心からの愛をこめて。

マラック

千夏さんからマラックさんへ

マラック、素敵なメッセージをありがとう。

あなたがそんなに料理上手だなんて知らなかったよ!ヨルダンを訪れる理由がまたひとつ増えました。あなたの手料理、ぜひ食べてみたいな。日本ではお寿司はどこでも食べられますが、私の故郷は海の近くなので、そこのお寿司は特に新鮮でおいしいです。いつかぜひ食べてもらいたいですね。あの頃のキャンプでのあなたの暮らしを思うと、本当に心が痛みます。
あなたが耐えてきたこと、そしてそのような困難な状況でもがんばり続けた強さを深く尊敬しています。
そして、ようやくシリアに希望が見え始めたことを聞いて、とてもうれしく思いました。時間はかかるかもしれないけれど、きっと少しずつ良くなっていくと信じています。
その時が来たら、あなたの美しい国を案内してほしいな。

今、あなたがキャンプで働いていることは本当に素晴らしいことだと思います。きっと、多くの子どもたちにとって、あなたの強さと努力は大きな励ましになっているはず。
あなたは本当にたくさんのことを乗り越えてきたし、その力はきっと未来につながっていくと信じています。
あなたには、たくさんの幸せがふさわしい。そしてきっと、それはあなたのもとにやってくるはずです。

いつもあなたのことを想い、遠くから応援しています。

佐々木 千夏

※本手紙は、本人の同意を得て一部表現を調整し掲載しています。

日本と海外の子どもたちが互いの違いや共通点を学び、友情を育み、共に成長できる社会を広げていくため、これからも応援をよろしくお願いします。

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