友情のレポーター(2024)としてカンボジアを取材した波田野優(はたの ゆう/14歳)さんより、取材レポートが届きました。
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2024年「友情のレポーター」の波田野優です。
今日は「若者の家」で暮らす女の子2人のお家に家庭訪問をさせていただきました。
前日の夜、インタビューで相手を傷つけてしまわないか不安になってしまいました。その思いをスタッフの方に話したら、私の気持ちを2人に伝えてみたら、と言葉をかけていただきました。
私を温かく迎えてくれたことへの感謝の思いを伝えようと2人に手紙を書き、渡したところから1日がスタートしました。
2人は手紙をうれしそうに読んでくれ、お互いの距離感がさらに縮まったような気がしました。
家庭訪問
ビル街の景色が草原に移り変わり、車に2時間ほど揺られて1軒目のソックンのお家に着きました。
車を降りたソックンは早足で家に向かい、今までに見せなかったほどの満面の笑みでお母さんに抱きつきました。
「若者の家」では、年に2回家に帰る機会が設けられており、ソックンにとって数か月ぶりの家族との再会でした。
はじめに、ソックンに家の中とその周りにある畑を紹介してもらいました。
特に印象的だったのはソックンが小さいときに寝ていた場所。雨をしのぐ屋根しかなく、牛のエサとフンの匂いが立ちこめる場所で昔は寝ていたと話してくれました。さらに驚いたのが、ここの方が部屋の中よりも涼しくて過ごしやすいと言っていたことです。
その後、ソックンにインタビューさせてもらいました。
ソックン:16歳、9年生、「若者の家」に来る前は学校に通っていた
A:家族と一緒にいられるととても幸せな気持ちになります。でも、家族にはたくさん働いてもらってお金を稼いでもらっているので、苦労をさせているとも感じています。
Q:ソックンの将来の夢は何ですか?
A:将来の夢は、兵士になることです。兵士は収入が安定している職業なので、勉強を頑張って兵士になり、お金を稼いで家族の役に立ちたいです。
あんなにも凛とした目は久しぶりに見ました。
将来の夢を語りながら家族への思いを伝えてくれたとき、言語がわからない中でもその目と表情から強い信念を感じることができました。
インタビューをするとき、「あなたとわたし」という視点から相手のめがねをかけて相手の世界を見てみようとしました。
ソックンの家から学校までは遠く、道も泥沼になっていました。私だったら、そんな道のりを歩いて毎日学校に行くことはできないと思います。
ソックンが夢を叶えるために学校に行くという意志の裏には、家族への愛と愛ゆえの申し訳なさがあるのだと感じました。そんな思いをもっている同じ年代の若者が海をまたいだ場所に存在するということに頭を殴られたような衝撃を覚えました。
母娘へのインタビュー、それぞれの想い
次に、2軒目のスレイローのお家に行かせてもらいました。
スレイローのお家は2階建てで、テーブルのある1階は開放感があり、風通しもよく涼しかったです。
家に入るなり、スレイローのお母さんが笑顔で椅子を差し出してくださりました。
スレイローとスレイローのお母さんにインタビューをさせてもらいました。
スレイロー:15歳、10年生、「若者の家」に来る前は学校に通っていた
A:家族に会えなくてさみしい気持ちになります。「若者の家」で暮らし始めたばかりの頃は特にさみしくなりました。
Q:「若者の家」から久しぶりに家に帰ってきてどんな気持ちですか?
A:幸せです。
【スレイローのお母さん】
A:家で暮らしていたときは学校に行く環境が整っていなかったから、「若者の家」にいくことでスレイローが学校に行きやすくなったりできることが増えるので、そのことにうれしく感じました。
Q:お母さんが幸せだと感じる瞬間はどんな場面ですか?
A:今スレイローは家で暮らしていないけど、他の家族のメンバーと一緒に生活ができて幸せです。
Q:スレイローが「若者の家」から帰ってきたときのお母さんの気持ちを教えてください。
A:スレイローとは長い間会っていなかったので、今日スレイローに会えてすごくうれしいです。
インタビューをしているときに、スレイローとお母さんは時折恥ずかしそうな表情を見せていました。
お母さんがスレイローを「若者の家」に送り出したときに、さみしさよりもスレイローのこれからに対する期待が大きかったと話してくれました。でも、スレイローのお母さんの表情から娘がいないことへのさみしさがひしひしと伝わってきました。そしてその思いが、「今日娘に会えてうれしかった」という言葉を放ったときの笑顔とその穏やかな目にあふれていました。
家庭訪問が終わり、スレイローが家を出て「若者の家」に帰ろうとしたとき、スレイローはお母さんに手を振りながら目頭をおさえていました。
たとえ私から見て大変でつらい環境で生活している人たちにも、大切な人、何にかえてでも守りたいと思う人がいるのだと気づきました。
そのときに、「私と同じだ」と感じお互いの心の距離がぐっと縮まったのと同時に、経済的な貧困を理由に離れて暮らさなくてはならないその状況に対して、締め付けられるような胸の痛みを覚えました。
2人へのインタビューを終えた後、誠意を持って向き合うことで少しずつ通じ合えるのだと感じることができました。これからもその姿勢を忘れずに過ごしていこう、と明日に向けて姿勢を正しました。
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「友情のレポーター」プロジェクトは、日本の皆さまからのご寄付と以下の皆さまのご協賛、ご協力と助成により実現しました。
<主催>認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
<協賛>国際ソロプチミスト東京-広尾
<協力>認定NPO法人Dialogue for People
<助成>公益財団法人三菱UFJ国際財団