報告:KnKフィリピンスタッフ
KnKフィリピンが運営する「若者の家」は、子どもたちが家庭環境に近い生活を送ることができる居住型施設です。「若者の家」では、子どもたちの基本的なニーズの提供と法的支援を通じて、心理社会的側面、歯科を含む医療面、教育面、心理面など、子どもたちの成長に必要とされるプログラムとサービスを提供しています。「若者の家」では、子どもたちを対象としたプログラムのみではなく、継続的な保護者向けセミナーを通し、子どもたちの家族にも働きかけをしています。さらに、「若者の家」を卒業、家庭に復帰した後の子どもも、奨学金や家庭訪問などのアフターケアプログラムを通して関わりを続けています。
「若者の家」の大切な役割は、子どもたちの成長と発達を支援するだけでなく、生活環境、社会の犠牲者であり、搾取されている子どもたちの癒しと回復を支える、家庭環境のようなサービスを継続的に提供することです。
また、「若者の家」 は、法に抵触した青少年が青少年収容所に送られることなく正しい適正手続きを受けられる、子どもに優しい環境を促進することを目的とした修復的司法アプローチの推進と実施も目指しています。
本日は、「若者の家」で生活する少年について、少しお話したいと思います。
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ジュエル(仮名)は19歳、「若者の家」では2年生活しています。5人きょうだいの長子ですが、近所に住んでいた弟以外のきょうだいには会ったことがありません。彼は成長過程において、家族に関する記憶はほとんどありません。父親が建てた廃材で作られた小さな家に住んでいたそうです。2022年、原因不明の健康上の理由で母親が他界したのと時を同じくし、父親も逮捕されました。彼と弟は、彼らの身に起こっていることの正しい認識も、別れもできずに、幼くして行き場をなくすことになりました。
ジュエルは色々な警察署で父親を見つけようと最善を尽くしましたが、そのうち諦めて、市場で食べ物を売る友人のそばで多くの時間を費やすようになりました。その結果、青少年収容所に入れられることになり、収容所での生活は決して楽なものではありませんでした。訪問者がいれば喜びを感じることもありましたが、どうやって施設から逃げ出すかを考える日々でもありました。
「若者の家」に入れるかもしれないと聞いたとき、違う環境で生活したい、と、彼はその機会を逃しませんでした。最初は「若者の家」の色々なルールに慣れることができませんでしたが、生活するにつれ、KnKの活動の意味やKnKの取り組みがわかってくるようになりました。
2年間の「若者の家」の生活で最も印象に残っていることは、KnKがジュエルの父親の所在を探し出し、父親が収容されている施設への訪問が可能となったことです。ようやく、彼のアイデンティティの形成に必要な最後のピースが見つかったのです。父親との再会が、ジュエルにとって希望と変化への架け橋となりました。
ジュエルは、彼自身住んだこともないような大きな家を家族のために建てたいと願い、エンジニアになることを夢見ています。
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「子どもの権利条約」において、特に路上生活をしている子ども、収容所の子どもなど、特別な保護を必要とする子どもに、子どもに配慮したプログラムを実施する責任を大人や国家が担うことは明確に記されています。一方、すべての子どもは権利主体であり、子どもとして、また一人の人間として彼らが権利を享受できない場合には、その責任を負う者に対して声を上げる権限と力を持っています。
子どもがその権利を享受できないとき、それは責任を負う者(duty-bearer)としての政府や大人、保護者の問題です。私たち大人が、子どもたちが当然に得られるはずのものを提供できていないのです。子どもたちが権利をはく奪された状況で育たなければならない状況にあることは、彼らの責任ではありません。そもそも、無条件に、交渉など必要なく、彼らは権利を享受できるべきなのです。
しかし、社会の中では、路上生活をしている子ども、子どもの権利が享受できない環境で育った子どもたちに対して、偏見や差別があります。もし、こういった偏見が続くようであれば、子どもたちは、私たちが彼らのために働くこと、支えようとすることを許さないでしょう。なぜなら、大人や社会が、すでに無条件に我々を信頼する自由を彼らから奪い取ったからです。私たち大人が彼らを無神経に判断した最初の人間であるという事実が、彼らの大人への視野を決めてしまいます。
私たちに今できることは、共感と同情の違いを知ることだと思います。子どもたちが信頼を寄せることのできるような人物になりましょう。信頼を得たら、最後までサポートしましょう。重要なのは、彼らをエンパワーし、彼らが色々なことに自ら関わることです。子どもそれぞれがユニークであることを常に覚えておいてください。
子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています
5,000円で、5人の青少年が1ヵ月間、学校に通えます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。
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