報告:パキスタン事業担当 村松さやか

再建された学校で学ぶ生徒たち
私たちが活動するパキスタンのバロチスタン州ウスタモハマッド郡の農村部では、人口の約8割が貧困層とされています [1] 。 そうした環境の中で、女の子たちが学校に通い続けるためには、さまざまな課題があります。その一つが、思春期を迎えた女の子たちが直面する月経の問題です。
月経は自然な生理現象ですが、正しい知識を得る機会が少なかったり、生理用品を十分に用意できなかったり、学校で安心して過ごせる環境が整っていなかったりすると、女の子たちの学校生活に影響を及ぼすことがあります。
例えば、学校に衛生的なトイレや安全な水がなかったり、生理用品を用意できなかったり、月経に対する恥ずかしさなどから、月経中に学校を休んでしまうことがあります。そうすると、授業についていけなくなり、毎月の欠席が積み重なることで、教育を受ける機会そのものを失うことにもつながってしまいます。
KnKがこうした課題に取り組むために新たに始めたのが、月経衛生管理に配慮したトイレの整備と、月経衛生管理に関する啓発活動です。もう、女の子たちが「誰も教えてくれない」と悩むことがないように。月経を「恥ずかしいこと」として隠すことがないように。正しい知識をもとに親子で月経について話し合える環境をつくることが、女の子たちが安心して学校に通い続けるための大切な土台だと考えています。
先日、KnKは学校に通う娘を持つ母親たちを対象にセッションを開催し、月経に関する正しい知識や、家庭で娘と月経について話すことの大切さを共有しました。

母親たちのセッションの様子
「もう学校に行きたくない…」初めての月経を経験した女の子
ある母親から、娘が7年生(11歳~12歳)のとき、学校で初めて月経を経験した日のことを聞きました。女の子にとって、それは突然で恐ろしい出来事でした。何が起きたのか分からず、恥ずかしさと不安から帰宅した女の子は、その後、学校に戻ることを拒みました。
母親は娘のそばに座り、「月経は自然な身体の変化であり、恥ずかしいことではない。月経があっても学校で学び続けることができる」と伝えました。母親の励ましと支えを受け、女の子は再び学校へ戻る自信を取り戻しました。
この母親の経験は、月経が女の子の教育にとってどのような意味を持つのかを象徴しています。女の子を学校から遠ざけるのは、月経そのものではありません。月経に関する「沈黙」「恐怖」「偏見」、そして必要な支援がないことが、女の子たちの前に壁をつくるのです。

グループになって話し合う母親たち
「娘と月経について話せるようになった」母親たちの変化
セッション後、複数の母親からは、「月経について話すことは難しく、気まずさもあったが、娘と話す自信がついた」という声が聞かれました。正しい知識と娘にどう伝えればよいかを知ったことで、月経を自然な身体の変化として伝え、必要な実践的・精神的なサポートができるようになったと話していました。
一方で、地域の市場で生理用ナプキンを購入できる場合でも、経済的に厳しい家庭にとって、毎月の購入費用は大きな負担です。限られた家計の中では、食料や水などが優先され、生理用品の購入が後回しになることもあります。そのため、家庭で手に入る薄い布などを生理用品の代わりに使用したり、生理用品を交換する回数を減らしたりする女の子もいます。そして経血の漏れや衣服の汚れ、周囲の目への不安から、学校を休むこともあるということを話してくれました。
月経だけではない――女の子たちを取り巻く課題
母親たちとの話し合いでは、月経だけでなく、ジェンダーに基づく暴力や児童婚など、女の子たちの教育を妨げるさまざまな課題についても語られました。パキスタンでは、女性に意思決定の権利が十分に認められていないことや、深く根付いた社会文化的な慣習により、学校へ行くことや日々の行動、そして自分自身の未来の選択肢までも、男性が決めるものとされ、それが当たり前のこととして受け入れられている場合があります。
女の子が学び続けるために、今回のような月経に関する啓発活動や衛生環境の整備は、そのための大切な一部です。しかし、それだけでは、パキスタンの女の子たちが直面するさまざまな壁を乗り越えるには十分ではありません。女の子たちの尊厳と安全を守り、安心して自分の声を上げ、学び続けられる環境をつくることが必要です。
KnKは、このように女の子たちを取り巻く課題を包括的に捉え、家庭、学校、地域社会とともに、女の子たちが安心して学び、自分自身の未来を選択できる環境づくりに取り組んでいます。
[1] https://file.pide.org.pk/pdfpideresearch/rr-multidimensional-poverty-in-pakistan.pdf
※ パキスタンにおけるKnKの活動は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の活用、ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。







