報告:プロジェクト・マネージャー 吉崎 翠
老朽化した校舎の新築と増設についてご紹介した前編につづきまして、その他の教育環境整備についてご報告いたします。
机、椅子などの教育資機材や文房具・スポーツ器具の提供
本事業の目的は、教育環境の整備です。質の良い校舎があっても、子どもたちが快適に勉強をするための環境としては不十分です。そこで、生徒用・教員用家具、キャビネット、ホワイトボード、文房具の提供を全5校に対して行いました。
同時に、より学校生活や勉学が充実し純粋に楽しくなるように、スポーツ器具や百科事典も提供させていただきました。
全5校への提供実績
生徒用家具(机・椅子) | 160セット |
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教員用家具(机・椅子) | 34セット |
キャビネット | 33個 |
ホワイトボード | 24個 |
文房具(ノート・筆記用具7点セット) | 938セット |
スポーツ器具 (ボール・バレーボール・バドミントン・縄跳びなど8点セット) |
5セット |
百科事典(5冊1セット) | 5セット |
全活動に共通することですが、コミュニティに質の良い教育資機材を提供するために、例えば、家具の作製中にも丁寧なモニタリングを続けてきました。
こういった細かな教育資機材は、校舎と同様に行政からの支援が十分に行き届いていないのが現状であり、高いニーズに沿うものでした。
地域の方々からは、校舎の支援と同じように、「自分たちの努力ではこんなに良いものはどうしても手に入らなかった。本当にありがたい」と、学校資機材の提供への感謝の声も多く寄せられました。
生徒やPTA(教員、保護者、地域住民)向けのワークショップ
本事業を通じて提供した校舎や教育資機材の維持管理を行う主体は、それらを使用する生徒、教員、コミュニティの方々であり、彼ら自身が維持管理の大切さを認識・理解し、長期的に実践していく必要があります。
そこで、複数回に渡り、生徒とPTA向けのワークショップを実施しました。「なぜ維持管理が大切なのか」という点から話し合いの機会を提供し、具体的な計画づくりまでを参加者の方と共に行いました。全5校において、例えば、「具体的にどの部分を、どう気を付けて扱えば良いのか」「誰がどの程度の頻度で何を担当するのか」などの実践的な維持管理計画ができあがりました。
全5校でのワークショップ参加者数と成果物
生徒向けワークショップ | 121名 |
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PTA(教員・保護者・地域住民)向けワークショップ | 462名 |
成果物 | 維持管理計画 |
ワークショップの開催を経て、建築工事途中にも各コミュニティの意識の向上や協力体制が見られました。
「提供された校舎や教育資機材は自分たちのものである」というオーナーシップが徐々にコミュニティに根付き、実際に教員の方々からは、「子どもたち同士で維持管理について話し合うなど、主体性や責任感が育まれているように感じる」などの声が寄せられています。
ワークショップの成果として完成した維持管理計画は、本事業の終了後も各校で実施されていきます。
カレン州教育局への全5校・学校資機材の引き渡し
以上のような活動を経て、2016年6月23日に、全5校の校舎と学校資機材をカレン州教育局へ無事に引き渡しました。当日はミャンマー・カレン州/コーカレータウンシップ教育局、各コミュニティの教員、村のリーダーの方々など計91名が参加してくださいました。
KnKが支援した5校は全て公立学校です。カレン州教育局に引き渡された後は、コミュニティの方々、コーカレータウンシップ行政、建築会社の協力体制により、維持管理が継続されていきます。
引き渡し式の開催は、地域の方々が今後必要とする協力体制を築くために、現地の全関係者が顔を合わせる場づくりの提供を目的としていました。
スタッフはもちろん、私たちKnKを常に温かく迎え入れてくださったカレン州・コーカレータウンシップのコミュニティの方々、現地の行政の方々への感謝の気持ちが堪えません。
そして何よりも、私たちが本事業を行えたのは、日本の皆さまのご支援があってこそのものでした。現地の方々からは、「支援してくれて、素敵な校舎や学校資機材を、本当にありがとう。日本の方々によろしく伝えておいてください」「いつでも日本から遊びに来てください」「支援してくれたものは、本当に大事に使っていきますね」という数えきれない感謝の声をいただきました。それらをそのまま、日本の皆さまにお届けできればと心から強く願うばかりです。
皆さまの温かなご支援に、今一度、心よりの御礼を申し上げます。
※ ミャンマーにおけるKnKの活動は、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム助成金(ミャンマー少数民族帰還民支援)の活用ならびに日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。
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