スタッフ日記 認定NPO法人国境なき子どもたちブログ

「ヨルダンでの学び」~新派遣員による初日記(前編)

はじめまして。
ヨルダン事務所派遣員の内山かおりです。

新卒として民間企業で働いた後、大学院にて修士号を取得し、国際機関と大使館での勤務を経て、今年5月からKnKのヨルダン派遣員となりました。

今までに旅行や留学、駐在で渡航した国の数はヨルダンを含めるとちょうど30か国となります。同年代の中では海外渡航数が比較的多く、様々な世界を見てきたと思っておりました。しかし、そのような思いはヨルダン着任後一ヶ月足らずで見事粉々に打ち砕かれました。

今回は、私が今まで知っていた価値観や世界はいかに限られたものだったかを思い知らされたヨルダンでの気づき、学びについて体験とともにお伝えできればと思います。

まずはじめは、謙虚さについてです。「謙虚」という言葉を辞書で調べると、辞書ごとに説明のしかたは様々ですが、総じていえば「控えめ、慎ましい、おごり高ぶらない」様子を指します。今まで、そのような謙虚な人には数多く出会ってきましたし、私自身もそうありたいと心掛けて生活してきました。しかし、ヨルダンで真の謙虚さを目の当たりにしたことで、今まで持っていたその謙虚さの価値観が大きく揺らぎました。私が真の謙虚さを目の当たりにしたFIFAワールドカップ2026での一場面について、ご紹介します。

ヨルダンは今回、ワールドカップへの初出場を果たしました。グループ戦3戦目の相手は前回の優勝国であり、今回、準優勝を飾ったアルゼンチンでした。苦しい戦いになるだろうと予想されたものの、ヨルダンは奮闘し、試合前半に見事1点を決めました。選手たちが喜びあい、ゴールを決めた選手の健闘を称えたのはほんの数秒のことで、選手たちはみな一斉にコートにひれ伏し神への感謝を一心にささげはじめました。初出場の舞台であの強豪アルゼンチンに対して1点を決めた、その偉大な功績を神から与えられたものと考え感謝したのです。もし私が選手たちと同じ場にいたら、私は間違いなくその功績は自分たちの努力が実を結んだ結果、自分たちが勝ち取った結果だと喜び舞いあがり、誰かから与えられたものだとはつゆも思わないでしょう。

宗教的な価値観だと言ってしまえばそれまでですが、どれだけ大きな結果を残し、喜びに包まれたとしても、それを自分たちの力ではなく、より大きな存在のおかげだとする姿勢のなんと謙虚なことか。その真の謙虚さを目の当たりにし、私が今まで思っていた謙虚さがどれだけ傲慢なものだったのか気づかされました。

これからはヨルダンの代表選手たちの謙虚な姿勢を見習い、何か嬉しいことがあったときにそれは決して自分一人の力ではなく誰かのおかげなのだと考え、より周りに感謝しながら生きていこうと、自身のありかたを見直すきっかけとなった体験でした。

つぎに、歴史に関して感動した瞬間についてご紹介します。ヨルダンの歴史は長く、ヨルダン最古の遺跡としては旧石器時代のものが発見されているほか、紀元前7,000年前の集落の遺跡も発見されています。また、ヨルダンは、現在のシリア、パレスチナ、エジプト、サウジアラビア方面を結ぶ交通の要所であることや、丘が多く周囲を見渡すことができ、要塞としての役割を果たしやすい立地であることから、アッシリア帝国、アケメネス朝ペルシア帝国、ローマ帝国、ビザンツ帝国、ウマイヤ朝イスラム帝国など様々な勢力が及びました。首都アンマンには、1つの丘の上にローマ帝国、ビザンツ帝国、ウマイヤ朝イスラム帝国時代の遺跡がそれぞれ残っており、約700年間にわたる3つの時代の遺跡を同時に見ることができます。

ローマ帝国時代に建設されたヘラクレス神殿の遺跡

それだけでも十分に歴史の壮大さに感動できるのですが、そのヨルダンの歴史的面白さに惹かれ、世界史を勉強しなおすなかで、さらなる感動がありました。

学術発展の歴史に関し、例えば数学は現在のエジプトやギリシャ、インドなどで基礎が築かれ、中東で大きく発展し、ヨーロッパに導入されました。その歴史は言葉に表れており、代数学を意味するAlgebra(アルジェブラ)や、問題を解くための手順や方法を意味するAlgorithm(アルゴリズム)などの言葉は、”Al-”(英語の”the”にあたる定冠詞)からはじまり、数学が中東で発展したことを物語っています。普段、意味を深く考えることもなく何気なく使用していた言葉が、実はその発展の歴史を教えてくれていたのです。そのことに気づいたときは深い感動を覚え鳥肌が立ちました。

これをきっかけに、言葉に注意を向けることで得られる楽しい発見があることに気づき、以来、言葉の語源やその言葉が生まれた時代背景をよく調べるようになりました。

言葉の語源を調べる中で、他に感動を覚えたことは、Happy の”hap”は「偶然」という意味をもつということです。言われてみれば、Happenにも”hap”が含まれており、確かに「偶然」という意味を含んでいます。つまり、幸せであることは当たり前なことではなく、偶然なのです。そう思うと、今、ヨルダンで幸せに過ごしていることに感謝する気持ちが芽生えてきました。これからは、この幸せは偶然なのだということを肝に銘じながら毎日を楽しく、幸せを満喫しながら過ごしていきたく思います。

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