スタッフ日記 認定NPO法人国境なき子どもたちブログ

ヨルダン・インターン日記No.6 2025.6.15

こんにちは。ヨルダン事務所でインターンしている辻元です。

5月25日はヨルダンの独立記念日でした。車に国旗をつけていたり、学校では子どもたちが独立を祝う作品を作っていたりしていました。夜には花火も上がるなど、街全体が大盛り上がりでした。

さて、今回はヨルダンに住んでいる人々が持つ故郷への想いについてご紹介したいと思います。

ヨルダンは中東の中心に位置し、周辺では紛争が続いている国もありますが、比較的安定した国として知られています。

日本の外務省のデータによると、ヨルダンの人口の約7割はパレスチナにルーツを持つ人々で、1948年以降のイスラエル・パレスチナ紛争により、多くのパレスチナ難民が流入しました。また、2003年のイラク戦争後にはイラク人が、2011年のシリア内戦以降には約140万人のシリア難民がヨルダンに避難してきています。
そのため、ヨルダンではさまざまな背景を持つ人々が共に暮らしており、自己紹介の際に「私はパレスチナにルーツがあります」や「故郷はシリアだけど、今は一時的にヨルダンに住んでいます」と話す人も珍しくありません。

今期の事業で実施している特別活動の一つである学級会では「故郷を思う気持ち」というテーマを取り上げました。多様なルーツを持っている子どもたちが通っているアンマン市内の学校と、シリア難民としてヨルダンに来た子どもたちが通っているザアタリ難民キャンプの学校、同じテーマでも異なる反応が見られました。

アンマン市内の子どもたちによる故郷の定義は「私が生まれ育ち、その土地に愛着と所属感を持つ場所」とまとめられました。それぞれの故郷に対する想いの表現方法として、ヨルダンの伝統文化を大切にしたり、国旗や遺産を絵で描いたりする時間を設けたりするなどが挙げられました。ルーツはさまざまであっても彼らにとって故郷はヨルダンであり、この国をいかに大切にしているかを表現することが重要であるようです。

一方、ザアタリ難民キャンプの子どもたちは、シリアを故郷として思い浮かべながら話し合いを進めていました。彼らが定義した「故郷」とは、「私が生まれ育った土地であり、その土地で生活をし、私の尊厳と権利を保護するところ」というものでした。
物心つく前にシリアからヨルダンに逃れてきた子どもたちにとって、シリアを故郷と認識するのは容易なことではありません。 彼らにとってシリアは、故郷と呼ぶにはあまりに遠く、それでも「自分の生まれた場所」、「自分のルーツやアイデンティティを認識する場所」として、特別なものとして存在しています。
このような環境の中、あるクラスでは、信仰や道徳を大切にすることが自分と故郷をつなげる方法だと考える子どもが多く見られました。信仰や道徳を大切にすることで心の中で故郷を思い続けることができるのです。例えば、盗みを働かないこと、他者への寄付や施しをすること、憲法や法律を守ることなどが挙げられました。また、イスラーム教の預言者ムハンマドによる言行録から関連する内容として紹介する子もいました。

そして、昨年、シリアのアサド政権が崩壊したことにより多くのシリア人が故郷へ帰還し始めています。ザアタリ難民キャンプの住民も例外ではありません。親戚がシリアに住んでいたり、以前住んでいた家が残っていたりする家族を中心に、少しずつ帰国する準備が進められています。シリアの記憶がない小さな子どもたちも、家族と共に初めての故郷へと向かいます。

この写真はザアタリ難民キャンプの写真で、元々住居があった場所が更地になっていることがわかります。

このように、一人ひとりが異なるバックグラウンドを持ち、それぞれが思う故郷を大切にしながら日々を過ごしている姿からは、ヨルダン社会の多様性が感じられます。周辺国の情勢が安定することを願いながら、ヨルダンもこれから先も変わらず穏やかな国であってほしいと願っています。

 

【ヨルダン(シリア難民支援)活動概要】

寄付する
寄付する
資料請求