報告:バングラデシュ事業担当 三喜 一史
この状況を受け、国境なき子どもたち(KnK)は、バングラデシュで長く一緒に活動している現地パートナー団体であるSociety for Underprivileged Families(SUF)と協力して被災地の支援を行いました。
9月7日~8日に初動調査を実施し、行政等との調整完了後の9月22日~23日にかけて支援物資の配布を行いました。
初動調査
初動調査ではフェニ県、クミッラ県、ノアカリ県とラクシュミプール県の4県を訪問し、被害の実態を確認し、行政や地域住民に聞き取りを行いました。聞き取りを行った結果、どこも被害状況は深刻でした。
特にノアカリ県とラクシュミプール県は、交通網への被害も大きく、中心地から離れていて他機関・他団体の支援が行き届きにくいため、孤立した集落が多いとの状況が確認されました。
被災地では家屋を失った方も多く、地域住民の多数が、安全面のことや水を媒介する感染症などの病気への不安を抱いていることがわかりました。既に下痢などの症状がある方も多数いることが確認されました。
また、特にこの地域においては農地や家畜の被害も甚大でした。稲作、サトウキビ畑など何万ヘクタールという農地が浸水し、使用予定であった保存種子や貯蔵穀物にも被害が及びました。洪水によって家畜を失った方々も多く、この損失は甚大で、元に戻るには数年かかると言われています。
支援物資配布
9月22日~23日にかけて、SUFスタッフと各県の有志で集まっていただいたボランティアの方たちの30名体制で支援物資の配布を行いました。お米、ビスケット、粉ミルク、小麦等の食料品、医薬品、石鹸、応急手当に必要な衛生キット、などの2~3週間分を配布しました。飲料水も配布予定でしたが、事前の聞き取りではジャガイモの要望が多かったため、食料品、医薬品の方を優先して配布しました。
ノアカリ県、ラクシュミプール県合わせて1025世帯に支援物資を配布しました。配布場所まで受取りに来ることができない方々もおり、その場合にはスタッフが各家庭まで物資を届けるようにしました。女性、子ども、高齢者、障がいを持たれる方のいる家庭へ優先的に物資を届けましたが、特に食料や医薬品の配布は子どもや妊娠女性にとってはとても重要でした。ある女性の『何日も子どもに食事を与えることができなかった』との言葉から、食料品へアクセスする手段が無いことと、地域によっては十分な支援が行き届かない現状を知りました。
そういった意味で、せめて食料を届けることができて良かったとスタッフ一同感じました。医薬品を届けることで感染症などの病気予防につながったと思いますが、物資を配布する際は、スタッフから今後の予防対策についての周知も行いました。
これから
バングラデシュ国内は平時に戻りつつあると現地より知らせがありました。しかし、上記のとおり、収入源となっていた農作物や家畜の損失は大きく、また家屋を失ったままの人も数多くいます。引き続き支援が必要ですが、現在、政府が各所に働きかけを行っており、国連機関や各NGO団体への支援要請を出しているとのことです。
特に、代替となる収入源の確保が喫緊の課題となっているため、これらの支援が可能な支援先を模索しているようです。以前もお伝えした通り、今年の8月に政変がおき、暫定政府によって民主的な政権移行を目指している最中ですが、今後への動きも少しずつ取られているようです。
ただ、何より、災害が発生して比較的早い段階で支援を提供できたことは、上記の女性の話しからしても重要なことであったと考えています。特に、水害によって孤立してしまった集落まで物資を届けることができたことは大きかったのではないかと思います。我々だけでなく他の機関・団体も支援を行ったと聞いていますが、それぞれの立場で実施出来ることに集中できたと感じています。それを可能にした皆様のご理解、ご支援に感謝申し上げます。
復旧・復興には更なる次のステップがありますが、今回まずは皆様のご支援がどのような形で被災者に届けられたのか、そのご報告をさせていただきました。
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