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教育熱心なパレスチナ社会の背景

2014/03/28
報告:現地代表 佐藤 健太郎

国境なき子どもたちは、外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を受け、2011年より、パレスチナ西岸地区で子どもや青少年を対象とした教育支援事業を行っております。現地パートナー団体であるVACA(Vision Association for Culture and Arts)と子どもを対象とした非公式教育と課外補習、青少年を対象とした職業訓練を主に提供しています。多岐にわたる事業の中で、今回は課外補習についてご紹介します。課外補習というと日本の塾のようなものを想像されるかもしれませんが、形式は似ていても意味合いはかなり異なります。

教育熱心なパレスチナ社会の背景

ゲームを通じて楽しくアルファベットを学習

パレスチナの教育課程では大学まで12年間のカリキュラムとなっており、primary schoolが6年間、elementary schoolが3年間、high schoolが3年間なっている点も日本と変わりません。ただし、学校の規模などの関係からこのカリキュラム通りにそれぞれの学校を卒業していくとは限りません。1年生から11年生までずっと同じ校舎で学ぶ私立の学校もあれば、4年生までしかない公立の学校もあります。後者の場合だと同じ地域の5年生以降の学校に移っていくことになります。

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英語のクラスルール。英語に少しでも親しみを持たせるために英語の教室にはいろいろな工夫があります。

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数学の先生のオリジナル教材。図形が苦手の子のための工夫です。

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数学のテスト。子どもの習熟状況に合わせ手作りのテストで到達度をチェックしています

全てのパレスチナの子どもたちに共通しているのは、12年生(日本における高校3年生)の終わりにTawjihi(トージヒ)という国家共通のテストがあることです。このシステムはアラブ圏の国家では共通で、とても重要視されています。パレスチナでもそれは同様で、Tawjihiの成績で大学進学の可否が決まるのみならず、その成績は多くの場合履歴書に記載されることが求められるため、就職にも関わってきます。
このような状況であるため、パレスチナの人たちの教育にかける思いはとても強く、Tawjihiが近づいた子どもたちは熱心に勉強をし、大学生の学業にかける思いもとても強いのです。また、多くの人たちが大学卒業後も余裕があれば修士号を取得したいという希望を持っています。失業率が30%近くある非常に厳しい経済環境では教育という無形の資産は必須のものであり、かつ、パレスチナの人たちの希望でもあるのです。
しかし、そんな中、多くの保護者は子どもの教育に大きな不安を抱いています。状況は改善されつつありますが、国家財政が不十分なため、給与の遅配などによる先生のモチベーションの低下、教材の不足、教室数やスペースの不足など、学校は多くの問題を抱えています。保護者からの聞き取り調査からは「学校だけでは苦手な科目に対するケアが不十分で不安だ」などといった評価が見られます。

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授業風景。一人一人丁寧に指導するよう心がけています。

私たちが運営している課外補習プログラムでは以上のような問題に配慮し、苦手な子などを中心に個別で指導することで、学校のカリキュラムについていけるようサポートしています。パレスチナには課外補習サービスは多く存在しますが、その大半が営利目的で個人により運営されており、非常に高い授業料であることが大半です。また、ほとんどが成績を上げるためのもので苦手を克服するためのものではありません。
私たちの課外補習の参加者の大半が低学年の子どもたちです。読み書きなどに問題を抱えるなど、多くの子どもたちが将来的に学校のカリキュラムについていけなくなりそうな不安を抱えています。私たちはその子どもたちをできる限り個別にサポートしていくことで問題を解決できるよう努力しています。
幸い、丁寧に指導するという方針も地域に受け入れられつつあり、保護者を対象としたアンケート調査などでも「個別にきめ細かく指導してくれているのでありがたい」などといった評価もいただくことができています。
このような方針で運営しているため、規模を拡大することはなかなか難しいのですが、その分効果的な指導をしていけるよう、VACAの先生たちは日々工夫を重ねています。このような工夫を今後とも続けられるよう、私たちは取り組んでいくつもりです。

 

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