活動ニュース

私たちの村に女子教育を

2011/02/28
報告:プロジェクト・コーディネーター
佐藤 麻衣子エリザベス

ジャパン・プラットフォーム
助成事業

完成したGPS Kando とその生徒たち

完成したGPS Kando とその生徒たち

去年の11月より実施しているハイバル・パフトゥーンハー州コヒスタン郡での洪水復興支援の学校再建事業第二弾ですが、悪天候などの障害を乗り越えながらも着々と完了に近づいています。建設予定20校中の11校が完成し、今まで野外教室で凍えながら授業を受けていた子どもたちにも安心して勉強できる場を提供する事ができました。引き継ぎ式の日に、支援物資として配布したノートや鉛筆などの新しい学用品を嬉しそうに両手で抱えながら、山道を家へと帰って行く生徒たちの小さな姿がとても印象的でした。

残りの9校も今月中には完了を予定しており、続々とPTAトレーニングや子どもたちの発表会などが催される予定になっています。校舎が出来た事で洪水後から学校を欠席していた生徒たちも戻って来る事を期待しています。学校などのインフラが整う事で周辺住民の生活が豊かになっていく事はとても喜ばしい事です。それを今回実感できたある出来事を皆さんに紹介したいと思います。

今、完成している学校の内の一校は、標高3000メートル程の美しい山々に囲まれたカンド村のGPS Kando という男子の小学校です。完成間近の頃、状況を視察に村に出向いた時の事です。7、8人のコヒスタン帽をかぶってウールの毛布を身にまとった長老風の男性が私の周りに集まり、今回の学校建設について感謝の意を表してくれました。これで村の子どもたちも安心して学校に通えると喜んでいました。一緒にチャイを飲みながら地域の話を聞いていると、遠くの家から恥ずかしそうにこちらを見ている女の子を眺めながら、女子の学校建設も考えてほしいと訴えてきたのです。

女子教育が必要と 訴えてきた男性

女子教育が必要と
訴えてきた男性

カンド村には今まで女子用の学校はありませんでした。そして村の男性たちは女子への教育には無関心どころか否定的だったといいます。この傾向は山岳地帯のコヒスタン郡全域に言える事で、珍しい事ではありません。しかし5、6年程前に山の麓の道路からこのカンド村に繋がる道が建設され、色々な物資と共に情報も運ばれ、女子教育の重要性を改めて考えるようになったと話してくれました。そこにいた他の人たちにも「女子教育は必要か」と訊いてみると、みんな「必要だ」と言っていました。道が担うのは物資の運搬だけではなく、まさに人と人を繋げる役割なんだと痛感し、遠い山奥に住む人たちの心を開かせる事もできたのかと思い感動しました。

「女子校が村に必要だと思う人!」という声に、 はい!と手を挙げる人々

「女子校が村に必要だと思う人!」という声に、
はい!と手を挙げる人々

コヒスタン郡はパキスタン全土で識字率最下位のハイバル・パフトゥーンハー州の中でも最悪の11.1%と言われています。その中でも女子はわずか2.9%と日本では考えられない割合です。コヒスタン郡の住民も教育に対する関心が低い事に要因があるのかも知れません。しかし関心というのは情報があってのもので、教育がなんなのか、そしてそれがある事で自分たちにどう影響するのかという事がわからなければ無関心でいるのは当然の事でしょう。コヒスタンは現地の言葉で「山の土地」を意味するくらいの高い山脈に囲まれており、アクセスが非常に困難な場所でもあります。かつてあった学校も2005年の地震で倒壊したままいくつも放置されていますが、政府も手が廻らない状態にあります。今回の洪水では112校が被害に遭いましたが、現在もKnK以外にはまだ支援団体は入ってきていない状態です。

カンド村の女子校建設への要望に応えるにはパキスタン政府が対応しないとならない為、時間のかかる事かもしれません。しかし村の人々は女子教育の普及にあたりできる事は何でもする、と意欲満々です。こういった傾向がもっと広まり、政府を動かせるだけの力になる事を願いたいです。

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