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カンボジア「若者の家」の子どもたち

報告:KnKスタッフ 三喜 一史

NPO法人国境なき子どもたちでは、2000年よりカンボジアのバッタンバン州において、支援が行き届きにくい15歳以上の未成年を主な対象とし、自立支援施設「若者の家」を運営しています。今回は「若者の家」から学校に通い勉学に励んでいる子を紹介したいと思います。

かつてカンボジアでは「近隣国での労働斡旋」という形での人身売買が後を絶たず、多くの子どもがその犠牲になりました。また、人身売買の被害にあった青少年に加え、孤児やストリートチルドレンの保護を行う施設があったものの、その多くは新たな年少者を受け入れる必要があるため12歳から15歳を迎えると施設を出ていく必要がありました。ご想像の通り、この年齢での自立は困難であり、施設を出た後、再び路上生活に戻ってしまうことも少なくありませんでした。

このように成人するまでの数年間の支援のニーズが確認されたことから、当団体では10代後半の子どもたちへの居住型の支援を行う、「若者の家」事業を2000年より開始しました。ストリートチルドレンや貧困・暴力など様々な理由によって親元で暮らすことができなくなった子どもたちと、施設を「卒業」して行き場を失った子どもたちに対して、衣食住の提供を行う生活支援、教育・職業訓練の機会の提供を行うと共に、細やかな心理的サポートも行い、経済的・精神的に自立することを目指して支援しています。

最近では人身売買の被害を受けた青少年の数は減ってきてはいるものの(「見えにくく」なっただけ?)、依然として、教育へのアクセスが限られていたり、貧困・暴力などの危険に晒されている子どもたちが「若者の家」にやってきたりします。

 

ソキムとソクリ

18歳のソキムと17歳のソクリは4年前、元々いた他団体運営の施設の資金難により「若者の家」にやってきました。2人とも多くの兄妹がいる極貧家庭で育ちました。

ソキムはまだ幼い頃、よく家族で住む場所を転々とし、食べ物を確保するのもやっとの生活を送っていました。両親は離婚し、また彼女や他の兄妹の教育についても無関心であった上に学校に行くことよりも家事を手伝うことを優先させられていました。また、父親からの暴力もひどく、彼女は伯母と暮らすことになりましたが、ここでも学校が家からとても遠く、バイクなどが無ければ通えない距離でしたが、伯母夫婦も彼女を経済的に助けることもしなかったため学校に通うことがとても困難だったそうです。

ソキムと一緒に「若者の家」にやってきたソクリもまた農家であった両親のもと極貧家庭で育ちました。両親が離婚すると父親から働くためにと学校を無理やり中退させられ勉強を諦めなくてはなりませんでした。家の収入が少なく、学校に行けなくなっただけでなく、栄養失調状態に陥ったところを保護されました。

学校に向かうソキム

支援団体に保護され、二人はまた学校に通い始めることができ楽しい時を過ごしていました。しかし、今度は団体の資金難により施設を出て行かなければならなくなり、4年前「若者の家」へとやってきました。ソキムとソクリは他3名の子たちと一緒に「若者の家」にやってきたため、始めからあまり不安は無かったとのことです。一方で、これまでの施設では幼い子どもが多かったため、10代後半の子ばかりがいる「若者の家」は新鮮に映ったそうです。

すぐに「若者の家」の子たちとも打ち解けることができ、学校にも通い始め、現在、ソキムは12年生(日本で高校3年生に相当)、ソクリは11年生(同じく高校2年生)に在籍しています。「若者の家」の子だけでなく、学校でも多くの友だちができ、毎日学校に通うのが楽しいと語ってくれました。

ソキムは来年の卒業試験のために今も一生懸命勉強して大学進学を目指しています。具体的に何を仕事とするかはまだわかりませんが、大学に進学したら中国語を勉強し、中国語を駆使して企業で働きたいとのことです。ソクリは卒業までにまだ1年以上ありますが、彼女は高校卒業後に何をしたいか具体的に決まっているそうで、ヨガ教室で働き、将来はバッタンバン市内で友だちと一緒にヨガ教室を運営したいとのことです。

休みの日にリラックスするソクリ

 

大学生になったリーホン

最後に、一足先に高校を卒業し11月より大学に通い始めたリーホンを紹介したいと思います。リーホンもまた大変な貧困家庭で育ちました。彼女がまだ幼い頃に父親を亡くし、その後、母親と母親の再婚相手である養父と一緒にしばらく暮らしていましたが、病気により母親も他界してしまいました。母親が亡くなってからは養父による暴力を受け続けていましたが、行政により保護され施設に孤児としてしばらく生活した後、14歳の時に「若者の家」にやってきました。

「若者の家」に来てからは9年生(中学3年生)に編入し、近くの学校に通い始め、猛勉強の末、今年の8月に高校卒業試験にも無事合格しました。更には、バッタンバン大学にも合格し今年の11月から晴れて大学生活をスタートさせました。昔から英語を勉強することが好きで、大学でも英語を専攻するとのことです。英語をもっと勉強すれば海外の多くの人とコミュニケーションを取れるだけでなく良い仕事に就きやすいということが英語を勉強するモチベーションにつながっているそうです。

大学卒業後は英語が活かせる英語教師かツアーガイドの仕事に就きたいと考えているようです。また、勉強など新しく学ぶことだけでなく、新しい友だちとの出会いや色々と経験できることを楽しみにしているそうです。これから一人暮らしを始める彼女ですが、『「若者の家」を出ても頻繁に遊びにくるつもり』という彼女の表情からは「若者の家」が近くにある安心感とともに、初めての一人暮らしが少し不安でもある様子が伺えました。

大学生活が始まったリーホン

「若者の家」では、2001年に初めて子どもを受け入れてからこれまでに450人程の子どもを受け入れてきました。現在も27名が「若者の家」で暮らし、学校に通って大学進学を目指したり、美容や自動車整備といった職業訓練を受けたりしています。高校を卒業後、または2年間の職業訓練を終えた後は家庭に戻ったり、一人暮らしを始めるなどし、自立への一歩を踏み出します。

引き続き、自分の将来を切り開くことができるように教育や職業訓練の機会を提供していくとともに、今回紹介させていただいた3名のように、子どもたちが明るい未来を描けるような場所で「若者の家」があり続けられるようにしていきたいです。

 

「若者の家」の子どもたち

 

※カンボジア「若者の家」の活動は、三井ダイレクト損保スマイル基金ならびに日本の皆さまからのご支援で成り立っています。

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3,500円は、カンボジア「若者の家」の青少年全員の食費(一食分)に相当します。
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