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中学就学率17%のカンボジア、地域で評判のKnK英語クラスとは

2015/01/21
報告:KnKカンボジア派遣員 永井 昌彦

KnKの英語クラスとは

KnKカンボジアでは、月曜日から金曜日までの昼に1回、夕方に2回、無料の英語クラスを開設しています。ほかに教養クラスも実施していますが、これらのクラスは地域コミュニティにも開放されており、連日多くの子どもたちで賑わっています。当初、KnKの「若者の家」に暮らす子どもたちを主な対象として識字教育を2002年頃から始めたものですが、少しずつ形を変えて現在に至っています。

KnKの裨益者を対象に行われる昼の英語クラスの風景

KnKの裨益者を対象に行われる昼の英語クラスの風景

 

大切な集いの場となった英語クラス

近年、この英語クラスが口コミで評判を呼ぶようになり、夕方のクラスにはKnKの施設内外から多くの子どもたちが参加しています。今では、地域コミュニティに暮らす子どもたちとKnKに暮らす子どもたちの大切な集いの場にもなっています。クラスではKnKで職業訓練を受ける人たちや、大人の姿が見られることもあります。長年にわたるKnKの活動がしっかりと地域コミュニティに根付き、年齢を問わず地域住民の皆さんにも慕われていることを実感させられます。

午後5時からの英語クラスの風景

午後5時からの英語クラスの風景

午後6時からの英語クラスの風景

午後6時からの英語クラスの風景

 

教育水準の低さと劣悪な環境

カンボジアの中学校への就学率は17%程度(外務省、2013年)であり、著しく低いのが現状です。既に知られているとおりですが、ポルポト政権時代には学校の教師は知識人として扱われ、強制労働などにより大多数が命を落としました。当時は多くの学校は破壊され、書物の大半が失われました。その後の内戦の時代を経て、近年は学校の再建などが進められていますが、建物の状態が良好な校舎の数は5割にとどまっています。教室の数が足らない学校では、午前と午後にわけて2部制で授業を行っていますが、それでも追いつかず3部制を導入した学校もあります。そのため、子ども一人当たりの授業時間は短くなっています。内戦で教員の数は激減し、正規のトレーニングを受けていない新たな教員が代替することになりました。そのため、現職教員の育成も必要です。都市域など一部では施設の整備が進んできていますが、利用できるのは未だ一部の比較的裕福な人たちに限られています。とりわけ農村地域での教育環境は劣悪で、深刻な社会問題です。

またストリートチルドレンやトラッフィッキング(人身売買)の被害に遭った子どもたち、極度の貧困家庭の子どもたちの多くが就学の機会が与えられない、もしくは学校を途中で辞めてしまうことが多いという事実も存在します。KnKが支援する子どもたちも例外ではなく、他にも多くの子どもたちが同じような厳しい境遇に置かれているのが実態です。

空いたペットボトルや空き缶などを集める子ども

空いたペットボトルや空き缶などを集める子ども

 

皆と遊び、楽しく学ぶことができる場所

KnKが運営する英語クラスの参加者は、その多くが恵まれた環境にありませんが、とても明るくて活発な子どもたちです。夕方、クラスが始まる前にKnKへ来ると、皆でボール遊びやゴム跳び、ビー玉などをして遊んでいます。KnKの子どもたちも一緒に遊んでいます。誰でも無料で参加できるKnKの英語クラスは、KnKとコミュニティの子どもたちとの交流が盛んになることにもつながっています。

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英語クラスが始まる前にゴム跳びやボールで遊ぶ子どもたち

英語クラスが始まる前にゴム跳びやボールで遊ぶ子どもたち

KnKカンボジアがあるバッタンバンは、国内有数の農村地域にある町です。周りに高いビルはほとんど建っていません、空き地もたくさんあります。しかし、子どもが安心して遊べる広場は、それほどありません。郊外に行けば、地雷に汚染された場所がたくさん残り、その被害が後を絶ちません。KnKに集う子どもの両親にも、農作業中に地雷の被害に遭い命を落としたり、働けなくなってしまったという例があります。KnKの英語クラスは、地域の子どもたちにとって単に勉強をするだけの場所ではなく、皆と遊び、楽しく学ぶことができる地域コミュニティの広場としても機能しているのです。

もう一つ、カンボジア全体として、英語の学習意欲が高いことが挙げられます。目標はさまざまです。学校でよりいい成績をとりたい、外国の人と話をしたい、将来の仕事に有利だから、などです。いまだに世界の最貧国レベルから抜けられず外国からの支援に頼るカンボジアでは、外国はある意味で憧れの的であり、いい仕事に就いて豊かな生活を送るためには、欧米を含む外国とのコミュニケーションが必要だと認識されていることがあります。

 

先生と生徒の声

英語を教えている先生の名は、ラチャナさんといいます。KnKのスタッフとして、子どもたちに英語を教えています。ラチャナ先生は、多くの子どもたちがKnKのクラスの受講に訪れることについて、以下の理由を挙げています。
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・ 一部子どもたちは家がとても貧しいので公立の学校に行けず、夕方に行われるKnKのレッスンを受けに来ている。補習の意味で来る子たちも多い。
・ KnKが家から近いので、遠くの学校に行くよりいい。
・ 無料であり、近所の友達と一緒に学べるし、遊べるから。

以下に紹介するのは、近くのコミュニティの村から英語クラスに参加しているニウェット君(仮名、11才)です。
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ニウェット君は普段公立の学校に通っています。でも英語の成績が上がらず、先生からKnKに行ってもう少し英語を補習した方がいいと勧められました。KnKの英語クラスに通い始めて約1年になります。
初めは英語が苦手だったのですが、今は2段階目のレベルを学ぶまでになり、簡単なあいさつができるようになりました。KnKの英語クラスに来ることが楽しいと話します。

次に紹介するのはボッパさん(仮名、10才)です。
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彼女の家庭は貧しく、公立学校には行ったり行かなかったりという状況です。そのような境遇でもKnKでは無料で英語を勉強できるので、夕方の英語クラスに通い始めました。始めてまだ3ヵ月程度の彼女ですが、今は英語で数を数えることができ、基礎的な単語のいくつかがわかるようになりました。英語を勉強することが好きだと話す彼女の夢もふくらみます。

 

課題と今後に向けて

多くの子どもたちが通い、地域コミュニティから支持されているKnKの英語クラスですが、実は多くの課題を抱えています。
KnKカンボジアの施設内の教室はとても狭く、希望者全員は入りきれません。そのため、今は空いているスペースを利用し、子どもたちは床に直接座って受講しています。狭いので、座るだけでめいいっぱい、ということもあります。カンボジアには日本と同様、伝統的に床上で過ごす生活様式があり、そのことに抵抗感が少ないことがあります。でも例えば英単語の書き取りなどはとてもやりにくく、効率的な授業とはいえません。
教材や文具についても、十分ではありません。壊れかかったものをずっと使い続けていたり、ほとんど何も持たずに受講する子もいますし、それが当たり前になっている子もいたりするほどです。KnKとして、最大限の努力を続けていますが、厳しい条件下でかろうじてやっているのが現状です。

KnKはこれからも、このような子どもたちをできるだけ広く支援していきたいと思っています、そのためにどうしても皆さまからのご支援が不可欠です。皆さまからの支援は、必ず子どもたちの将来に有益な成果へとつなげます。今後とも、KnKの活動への心暖かいご支援を賜わりたく、切にお願いいたします。

※ カンボジアにおける英語クラス事業は、”Global Fund for Children”からの助成と、日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

子どもたちを支えるために、あなたのサポートを必要としています


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5,000円で、5人の青少年が1ヵ月間、学校に通えます。
国境なき子どもたちへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

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