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キャリア教育ーそれぞれの時間の過ごし方

報告:シリア難民支援 現地事業総括 松永 晴子

昨年の9月から開始したキャリア教育の授業は、長引く難民キャンプでの生活の中で、シリア難民の子どもたちが少しでも自分の将来を前向きに考え、今できることが何なのかを見つめるための時間です。1クラスがKnKの授業を受けるのは週に1回だけなので、音楽や作文などの授業とのバランスも考えて、3週間に1度の授業となっています。

8年、9年生など、高学年の生徒にとっては、具体的な職業や勉強の意義は比較的見出しやすいのに比べて、5年、6年生の多くの生徒にとっては、まだまだ将来のことは眠っている時に見る夢のように、ぼんやりしていることが、前学期の授業から見えてきました。
前学期は主に、さまざまな職業について見識を広げる内容となりました。
新学期に向けての準備の中で、KnKの先生たちはキャリア教育の内容について話し合いで、今学期は、実際に生徒が今、どんな努力ができるのかのきっかけ作りになるような授業にしていこう、という方向に決まりました。

今学期1回目の週は、タイムマネージメントについての授業となりました。
学校以外の時間をどのように過ごしているかを振り返ることで、どんなことに時間を使っているのか、どんなことをするのが好きなのか、またどんなことをしていきたいのか、が見えてきます。
8年、9年生の生徒たちには、プリントを配布しました。自分の一日を振り返り、「家や家事に関すること」「勉強(宿題)に関すること」「趣味や楽しみに関すること」の3種類に分け、どんなことを何時間したのかを書き出していきます。また、その一日は、充実した日だったか、思うようにいかない日だったのか、どんな一日だったかを総合的に評価します。

一日の様子を書き込んだ生徒のプリント

プリントを使って行った授業、生徒たちが宿題の紙を見ながら、自分の一日をクラスメートに紹介します。
例えば8年生(中学2年生)の女子生徒の土曜日は次のような感じです。
9:00 起床 朝食、部屋の片付け
10:00 – 14:00 テレビ
14:00 – 15:30 数学、化学、アラビア語の勉強
15:30 – 17:00 昼食の準備と昼食
17:00 – 20:00 携帯電話のゲーム
20:00 – 23:30 テレビ(夕食あり)
24:00 就寝

この生徒の場合、一日のほとんどは遊んでいて、家事等の手伝いや掃除等は3時間、勉強は1時間半、と少なめです。

他の生徒の火曜日の一日も紹介しましょう。

8:00 – 11:45 学校
12:00 – 12:30 家の掃除
12:30 – 13:00 昼食
13:00 – 14:00 宿題
14:00 – 15:00 テレビ
15:00 – 18:00 親戚の家に遊びに往く
18:00 – 19:30 夕食、家族団らん
20:00 就寝

8年生だと、まだほとんどの生徒が遊び中心のようです。
今でもザアタリ難民キャンプの中は夕方5時から夜中までしか電気が通っていませんが、世帯によってはジェネレーターを個人で持っていて、昼までも使える家庭が出てきました。その結果、日中でもテレビが見られるようになった、というわけです。
シリア人の先生が、みんなよく見ている人気のドラマの名前をいくつか出すと、あれは面白いよね、とか、あの男優はかっこいいよね、など近くの席の子と話が盛り上がります。
女子シフトの女の子たちの様子は、日本の同年代の子たちと変わりません。

「どれだけシュワルマ(肉の入ったサンドイッチ)が好きでも、一年ずっと食べていたら、違うものが食べたい、ってなるよね。それと同じように、どれだけ好きな遊びでも、ずっとやっていると飽きてしまう時がくるんだ。きちんとした目的や目標があるものは、ずっと続けていても飽きないけれど、目標がないものは、つまらなくなってしまうよね」
先生はある授業の終わり、生徒たちに話していました。

女子シフトで自分の一日について、クラスメートの前で発表する生徒

でも、9年生になると、休日の過ごし方も少しずつ変わってくるようです。
携帯ゲームやテレビは1時間半程、4時間ぐらいはアラビア語、英語、数学の勉強をしている子がいたり、難民キャンプ内のセンターに補習授業を受けにいく子がいるなど、勉強に費やされる時間は長くなります。
生徒たちの一日を聞いた後、先生が自分の経験談で、大学入試試験の前の日々を話しはじめると、生徒たちは真剣な目つきに変わって、じっと話を聞きます。一日の中で各教科に使う勉強時間を始めに計画していたという話から、自分なりに計画表を作って部屋に貼っておくなどのアイディアを、生徒たちに話していました。

男子シフトでの授業風景

シリア難民キャンプの学校はあくまで勉強をするところ、学校が2部制であることもあり、時間に余裕はなく、時間割も教科の授業のみで、日本では一般的なホームルームの時間はありません。教科に関わる授業の他は受ける機会がない生徒たちにとって、学校の授業の中で自分自身のことについて考えることのできるキャリア教育は、大事な時間です。

ただ同時に、生徒にとっても、教員にとってもあらたな試みで手探りではあります。
自分の一日について話をした後、クラスメートの反応に恥ずかしがったり、誇らしそうにしている生徒たちの様子が見られました。
閉鎖されてはいるけれど、学校という学びの場に進んできているシリア難民の子どもたちが、難民キャンプでの日々の暮らし、そして自分の将来を見つめ直すきっかけを得る授業として、今後の授業展開も有意義なものになるよう、今週は子どもたちの反応をよく見ていきたいと思っています。

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