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もっともっと学校で勉強がしたい!! ~シリア難民の子どもたちの願い~

報告:プロジェクト・コーディネーター 福神 遥

今回は、KnKが実施している音楽、演劇、作文の3つの教科について、普段の授業がどのような様子をご紹介いたします。

KnKの授業では、生徒たちが安心して学べる環境作りと、楽しみながら学べる授業を心掛け、新しい知識を得ることの喜び、友だちと学校で学べることの楽しさを生徒たちに伝えられるよう、努めています。
また、各教科を通じて、子どもたちのアラビア語と英語の能力向上も目指しており、学期始めと学期終わりに行われるアラビア語と英語のテストでは、それぞれ8割を超す子どもたちに能力の向上が見られています。

教員たちは、新学期が始まる前のミーティングで教科ごとに学期のプランを考え、学期の終わりには、授業の内容や子どもたちの様子、問題点を全員で共有して、より良い授業づくりの工夫をしています。

音楽

音楽では、歌うことを中心に、楽器の演奏や楽譜の読み方など、音楽の知識を多角的に学ぶことを大切にしています。
子どもたちが歌う歌は、シリアの伝統的な歌や、アラブで流行っている歌、英語の歌とさまざまです。1番人気なのは、アラブ世界で広く聞かれている、レバノンの歌姫フェイルーズの曲です。シリアやヨルダンで、家やカフェでどこでも聞くことができる、子どもたちにとっても馴染みが深いフェイルーズの曲は、子どもたちも大好きです。防音設備などないキャンプ内の教室では、元気よく歌う子どもたちに、他のクラスの邪魔にならないよう、もう少し声を落として歌うように注意をすることもあるほど、いつでも子どもたちは大きな声で歌を歌っています。
音楽の教員たちは、演奏家として活躍していた経歴も持つ教員ばかりでなので、キーボードやダラブッカ(アラブの太鼓)、カヌーン(アラブのお琴)やウード(アラブのギター)が伴奏に使われて、音楽の授業はいつも賑やかです。
新しい歌を覚える時には、教員が歌詞をホワイトボードに書いたり、朗読をし、子どもたちがその歌詞をノートに書くことで、アラビア語と英語のリスニングやライティングの技術も身に着けられるようにしています。
楽器の演奏では、キーボード、アコーディオン、ダラブッカの弾き方を教えています。楽器を演奏する機会がなかなかないキャンプ内で暮らす子どもたちにとって、楽器の演奏は楽しい時間です。男子シフトでは、ダラブッカの音に合わせて手をつなぎながら踊る、ダブケという踊りも大人気です。
シリアのカリキュラムには含まれている音楽の授業ですが、ヨルダンでは学校によっては授業がないところもあり、キャンプ内の公立学校のカリキュラムには音楽の授業はありません。歌の背景にある文化や歌詞の意味を教員たちが教えることで、より歌の世界を知る事にもつながっています。

演劇

演劇の授業では、体を動かし、声を出して自分の思いを表現することを大切にしています。
演じる題材は、教室での過ごし方、友情について、掃除や整理整頓、お年寄りとの付き合い方など、マナーやルール、道徳を学べる題材を多く選んでいます。
教員が台詞を考えるだけではなく、テーマに沿って、子どもたちが自分たちで台詞を考えたり、劇の途中からアドリブにし、自分たちで劇の続きを考えたりと、子どもたちが表現の仕方を考える機会を多く作っています。
学期終わりには、グループごとに脚本を作り、1番よくできた脚本の劇をみんなで演じる、コンクールも開かれました。
演じることが難しい低学年の子どもたちは、動物のパペットを使って、よりわかりやすく、楽しく演じられるようにしています。また、小道具を作成したり、ウィッグや衣装を着て、メイクもして、本格的に演じることもあり、さまざまな工夫をしています。
声を一切出さず、表情や体だけで表現をする劇やゲーム、脚本がない劇の内容をその場ですぐに考えて演じるような即興劇も行い、子どもたちが自分の思いを気軽に、簡単に表現できる場の提供にも努めています。人前で演じることに恥ずかしさを覚える子どもにとっても、ゲームや即興劇は人気があります。
演劇の教員たちは、演劇の教員経験が豊富な人や、映像の仕事に就いていた人、美術の教員など、経歴がさまざまな分、たくさんのアイデアが集まって、工夫が施された授業が行われています。

作文

作文の授業では、読むこと、書くこと、聞くことを大切にし、朗読や文章の作成、教員からの読み聞かせを中心に授業が行われています。
日常生活や自分の思いを詩にすることが多いシリアの人々。昨年度の授業では、子どもたちが自分の思いを詩や文章にし、詩集や絵本を作成する授業を行いました。子どもたちが選ぶ題材は、友情や将来の夢、シリアにいた時の暮らしやキャンプでの生活など、それぞれです。保護者向けの参観日には、自分が作った詩を朗読し、保護者やクラスメイトたちに披露しました。
教員からの読み聞かせでは、日常生活のマナーや道徳を学べる題材から、お姫様が登場するような恋愛の話、また日本でも馴染みが深いイソップ物語など、さまざまな本を読み聞かせます。眠くなりがちな読み聞かせの時間でも、子どもたちが物語を要約する、物語の続きの展開を考える、会話の意味を考えて発表するなど、一方的な授業ではなく、子どもたちが参加できる時間を多く設け、退屈にならないように工夫をしています。また、物語に出てくるアラビア語の単語を英語では何というか、子どもたちに質問をしたり、その単語を使って英語で文章を作ったり、アラビア語と英語を楽しく学べる場にもなっています。
国語(アラビア語)の教員として、長く教鞭を執ってきた教員が多く集まる作文の授業では、覚えることが難しいアラビア語の文法や発音の仕方をじっくり学べる場になっています。

教員たちは、学期プランに加えて、週ごとのプランも考え、各授業の後には、子どもたちの様子がどうだったか、次に活かせる反省点はないか、日々教科ごとのチームで話し合い、教科を越えた情報の共有も行って、より良い授業づくりに努めています。

次回は、今年の冬休みの活動の様子や、夏休みに考えている活動内容について、お知らせしたいと思います。

【緊急募金】この夏も、難民キャンプで課外授業を実施するには、皆さまのご支援が必要です。

夏休みを楽しみにしている子どもたちに、今年の夏も課外授業を提供できるよう、皆さまのご理解とご支援をお願いいたします。

150万円集まればできること

ヨルダン北部にあるザアタリ難民キャンプで中学校2校の夏休みの課外活動として、シリア難民の子どもたち(7~16歳)約280人に対し、情操教育をメインとした課外授業を提供します。
【具体的な使いみち】
・音楽、作文、演劇の課外活動のための文房具や材料費
・ヨルダン人教員、シリア人教員、授業運営スタッフの人件費
(*最大人数でヨルダン人教員6名、シリア人教員12名、現地スタッフ1名)
・授業運営に必要な通信費及び交通費
―――
【支援により得られる効果】
1. 難民キャンプ内で、学校でクラスメイトと過ごせる時間は子どもたちにとって貴重な「楽しい時間」です。シリアから逃れてきた子どもたちへ、楽しく安心できる居場所を提供し、心身の健全な成長を促進します。
2. 夏休みも継続して学校での活動に参加することで9月からの新学期の通学に対するモチベーションを高めます。
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*目標金額に達しない場合は、規模を縮小して課外活動を行います。
*目標金額以上に募金が集まった場合は、9月以降のシリア難民支援に充当します。

※Tポイントからご寄付いただけます!

※メッセージ欄に「シリア」とお書添えください。寄付金控除の対象となります。

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【ヨルダン(シリア難民支援)活動概要】

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