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長期化する避難生活を支えるために

報告:プロジェクト・アドミニストレーター 加藤香子

今号では、非公式教育を通して見られる、子どもたちの成長の記録をお伝えします。

日々成長を続ける子どもたち

ヨルダンには、50万人にも上るイラク難民が住むといわれています(UNHCR調べ)。そんな難民が多く暮らすマルカ(東アンマン)のユースセンターで、ヨルダン事業の大きな柱の一つである非公式教育を提供しています。2007年以降、難民の子どもたちは公立学校に通えるようになりました。しかし現実は、イラクで使われる方言を使ったためにからかわれるなど、先生やクラスの仲間になじめず、学校に通い続けることのできない子どもたちも少なくありません。そんな子どもたちへ、センターでは「楽しく、わかりやすい」授業を行うことで、子どもたちは日々、成長を見せてくれています。

最初は挨拶をするのも、ましてや英語を使うことも恥ずかしく黙っていた子どもが、今では私たちへ自然と英語の挨拶をかけてくれるようになりました。英語の授業を通し、英語を話すことへの抵抗がなくなった証拠でしょう。
ダンスやサッカーのクラスは、特に人気があります。ダンスクラスでは、皆で一つの曲を踊り上げるまでに上達しています。さらに、人前で踊ることへの自信もついているようです。サッカーのクラスでは、先日、地元チームと試合を行い、互角の勝負を繰り広げました。授業だけでは味わえない、対戦相手から点を奪われる悔しさを知り、チームプレイの大切さを学びました。

授業前、待ちきれない様子の子どもたち 「今日の私の授業は英語?」

表情は真剣そのもの

対戦での一コマ 「ボールを取り返せ!」

また、ダンスやサッカーのクラスを受講する子どもたちを中心に、ジャージの配布も行いました。このジャージは、いつもご支援頂いているジャパンプラットフォームと日本郵船グループのご協力を通じて、株式会社アシックスより寄贈して頂いたものです。これまで子どもたちの大半は、スポーツを行う際に運動に適した服装を用いる習慣が無く、普段着のままクラスに参加していました。

今回ジャージが配布されたことで、より快適に運動することができるようになり、クラスへの参加意欲も高まりました。さらに、イラク難民の子どもたちへ「日本」という「国」としての、顔の見える支援をアピールできました。

手作りのポスターと共に 「Dear Asics, Thank you for your support.」

学期が終わる際には、これまでの授業の理解度を測るテストを行います。今回行ったテストの結果、約7割の子どもたちが、きちんと授業を理解し良い成績を納めたことがわかりました。その子どもたちへは修了書を贈呈、併せて、日本の支援者からいただいたノートを配布しました。5本線がひかれた音楽用ノートは、英語やアラビア語のアルファベットを書く練習に生かせそうです。

誇らしげな表情の子どもたち

これからも勉強、がんばるぞ

長期化する避難生活を支えるために

センターにやってくる子どもたちの表情は明るく、落ち着いているように見えます。特に辛い体験を持つイラク難民の子どもたちにとって、「週に○回、センターに通う」という生活のリズムができることは、自分の居場所を見つけ、生活と心の両方での安定を取り戻す大きなきっかけになっているといえます。避難生活という“非日常”の中で“日常”を取り戻すこと、子どもの権利条約にも通じる大切なポイントです。
一方で、ヨルダンでの避難生活は長期化する傾向にあります。マルカで出会うイラク人からは、「安全が100%約束されない限り、帰りたくはない。」という声を多く耳にします。また、戦争から6年を経た今なお、安全を求めてヨルダンへやって来る家族も少なくありません。帰還が急速に進むとは楽観視できない現状下で、イラク難民の子どもたちのニーズにより叶ったセンターを運営していきたいと考えています。今後も皆様のご支援、よろしくお願いいたします。

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