活動ニュース

イラク避難民の子ども・青少年を対象に緊急支援を開始

2015/02/12
報告:KnKスタッフ 熊本 晃順

国境なき子どもたち(KnK) は、イラク北部のクルド人自治区エルビル県において、ISIL(イラク・レバントのイスラム国)の脅威から逃れるため故郷を離れ、避難してきた子ども・青少年に対し、2015年3月より心のケアを目的とした緊急教育・スポーツ活動支援を開始します。

 

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避難民への聞き取りより

“2014年8月6日夕方、町の防衛を担っていたペシュメルガ(クルド人治安部隊)が撤退し、ISIL(イラク・レバントのイスラム国)が私たちの町に侵入してくると聞きました。その瞬間、もはや身を守るすべは何もないと悟りました。即座に町全体が避難を始め、道路は何千何万という人々にあふれていました。夜通し歩き続け、翌日やっとの思いでクルド人自治区首都エルビルに到着しました。”

 

クリスマスを目前に控えた12月、KnKがエルビルで出会った避難民は、みな同じ経験を口にしました。彼らは、モスルとエルビルの間に位置するバルテラやバクディータ(カラコッシュ)からの避難民で、8月6日50km以上もの道のりを越えてエルビルへと逃れたのです。

背景

2014年6月イラク北部の都市モスルを攻略したISILは、以降イラク国内でも勢力を拡大しています。現在までに200万人以上がISILから逃れ国内避難民となり、そのうち約70万人が比較的治安が安定しているクルド人自治区北部のドホーク県や東部のスレイマニヤ県、エルビル県などに避難しているとされています。

エルビル郊外に位置し空港からも程近いアンカワ地区は、歴史的にキリスト教コミュニティが形成されており、現在2万人を超える国内避難民が生活をしています。彼らの多くはキリスト教徒ですが、イスラム教徒やヤジディ教徒も安全を求めこの地区に避難しています。彼らは教会の支援のもと、教会敷地内や公園、学校や建設途中の建物などにテントやキャラバン(仮設住宅)を設置し、生活していました。

国内避難民となった今、彼らはいつ自分たちの故郷に戻れるか、今はまったくわかりません。避難せず、故郷にとどまった者たちからの連絡は途切れてしまい、彼らの安否すら確認できません。唯一確かなのは、自分たちの町がISILの手によって制圧されてしまったということだけなのです。

支援ニーズ

避難民の多くはアラビア語を母国語としており、クルド人が使用するクルド語とは異なる言語を話します。言語の違いから、避難民の子どもたちは学校への編入が滞り、教育へのアクセスが途切れています。環境が一変したことにより、子どもたちは、暴力行為や万引きなどの軽犯罪を行う、ストレスを抱えふさぎがちになるなど、多くの変化が報告されています。

初動調査

2014年12月に日本からスタッフ2名をエルビルに派遣し、国内避難民の初動調査を実施しました。調査では、避難民への聞き取りや、行政や国連機関、国際機関や現地で活動する日本のNGOなどから情報収集を行い、事業の策定を行いました。その後フランスのウエストフランス・ソリダリテから助成を得て、避難民への支援事業を実施することとなりました。

事業内容

KnKは、2015年3月1日から3ヵ月間、クルド人自治区エルビル県エルビル市アンカワ地区にて、国内避難民の子どもおよび青少年300名(最大800名)を対象とし、紛争という緊急事態下においても子どもたちが心身共に健全な成長できるよう、教育・スポーツ活動支援を開始します。
本事業は、現地パートナーと協力のもと、エデュケーター3名とボランティアスタッフにより運営実施し、アンカワおよび周辺の避難生活区域にて生活している子どもや青少年にスポーツ活動の機会を設け、同時に教育資機材やスポーツ資材を提供します。

支援の呼びかけ

日本の一般市民の皆さま、企業や財団の皆さまにもぜひ本事業にご協力いただきたく、ご支援をよろしくお願いいたします。
避難民となった子どもたちが故郷に再び戻れる日は、まだ先のことかもしれません。しかし、KnKは、彼らの「今」の生活に手を差し伸べ、寄り添うことができます。教育が、紛争や侵略、不正義に対するひとつの手段であると、KnKは信じています。

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