スタッフ日記 認定NPO法人国境なき子どもたちブログ

アワビ漁について<前編>

こんにちは、KnK岩手事務所の東です。
今日は我々岩手事務所のある岩手県沿岸地域の様子をお伝えしたいと思います。

岩手県沿岸では11月よりアワビ漁が解禁されました。この漁の解禁をこちらでは「口開け(くちあけ)」といい、水産資源保護のため、シーズン毎に解禁の日数が決められています。そんな中、11月5日に釜石市唐丹町で今シーズン初となるアワビの口開けがあり、実際地元の方の舟に乗せていただきアワビ漁に同行させていただきましたので、その時の様子をレポートしたいと思います。

この口開けの日程は前もって決められておらず、口開けの前日の午後に知らされます。というのも、漁は天候だけでなく海水の澄み具合などにも左右されるため、前もって決めておくことができず、前日に判断するしかないからだそうです。漁は日の出とともに出港のため、朝5時には港に行き、「サッパ船」と呼ばれる小型の舟に漁の道具を積み込みます。海の中を探るための水中メガネを大きくしたような仕組みの箱メガネ、アワビを採るための先にカギがついた竿、採ったアワビを入れておくための万丈(ばんじょう)と呼ばれるカゴなど、普段の生活では見ることのない様々な道具が積み込まれていました。
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道具が積み込み終われば、さあ出港です!!
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・・・と思いきや、しばらく船上にて待機。なぜなら、アワビが取れるポイントの場所取りは早い者勝ちのため、狙った漁場を確保しようと早くからの場所取りなど過度な競争を抑える必要があり、安全のために出港は5時30分と決められています。そのため、しばし寒風吹く船上にて待機。そして5時30分、一斉に狙ったポイントに向け我先にと舟を走らせます。

寒風に耐えながら、船上で揺られること約10分。ポイントに到着すると、さっそく箱メガネで海中の様子をチェック。この時、ただやみくもに探すのではなく、アワビは昆布などの海藻をエサとするため、昆布が良く育っているところを探すそうです(船の上からでも、昆布が育っている場所と海藻がない砂地の場所は色が違って見えます)。

海は深いので、アワビを取る道具だってこ~んなに長い!

海は深いので、アワビを取る道具だってこ~んなに長い!

澄んだ海の色。

澄んだ海の色。

また、アワビは岩陰などに隠れているため、舟を細かく移動させて見る角度を変え、入念に、かつ手早く調べていきます。海藻をかき分けながらも運良くアワビを見つけられればいいのですが、うまく見つけられない場合は他のポイントに移動します。しかし、いいポイントは他の舟がおさえている時もあり、熾烈な場所取りが行われます。この時、舟は船外機(船用エンジン)ではなく、「させ」と呼ばれる人力での櫂(かい)を漕いでの移動になります。
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というのも、リアス式海岸は入り組んでおり、海上も海中も岩だらけのため細かい操船が必要になります。そのため、入り組んだ岩場の奥まで入っていくことができる櫂を漕いでの移動が適していると言われています。

そんな大変な「させ」ですが、今はもう時代が変わり、何と「自動させ機」なるものが登場しました。

噂の「電動させ」ことスラスター。奥に見えるのは箱メガネです。

噂の「自動させ機」ことスラスター。奥に見えるのは箱メガネ。

これは電気で動くモーター式のもので、アワビの取り手が箱メガネを見ながら、片手で自ら船を操縦することができるというすぐれものです。本来、このアワビ漁にしろウニ漁にしろ、「取り手」と「させ」の二人一組が基本でした。そして、この「取り手」と「させ」が息を合わせ、「取り手」が進みたいよう意を汲み取って舟を動かすのが、いい「させ」の条件と言われていました。この自動させ機の登場により、取り手は細かい指示を「させ」に出さなくても舟を操縦できるになり、今までの常識は大きく変わったのではないかと思います。

こういう機械が必要になってきた背景として、一概には言えませんが、漁師の高齢化・後継者不足があるのではと考えています。今、私が漁のお手伝いをしている漁港では、漁師の方の平均年齢は60歳を超えており、私と同年代、もしくは若い世代はまず見かけることはありません。また、その家庭に子どもがいたとしても、町を離れ都市圏などで就職をしてしまうため、こういった漁を手伝う人も少なくなってきています。そういった漁業の担い手の不足・高齢化が進む中で、重労働である「させ」を続けるのも難しく、不足する役割を担うかたちで機械化が進んだのではと考えています。

果たしてアワビは取れたのか・・・?!後編に続く!

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