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ストリートチルドレンの世界に必要な”交渉能力”を身につける

 

報告:プロジェクト・コーディネーター 西村 静
 

KnKはバングラデシュの首都ダッカでストリートチルドレンのための「ほほえみドロップインセンター」を運営しています。

 

ストリートチルドレンには成長を手助けする大人の存在が必要

「ほほえみドロップインセンター」(以下略DIC)に来ているストリートチルドレンの生活環境と家庭で育った子どもたちの環境の違いは、愛情を持って指導育成をしてくれる大人が身近にいないということです。子どもならば、誰しも日常生活の中で当たり前のように間違いや失敗を起こすものです。しかし、ストリートチルドレンには、間違いを起こしたとしても温かい目で見守り、彼らの成長のために注意をしてくれる大人が側にいないのです。

むしろ、路上で暮らす彼らは日々の生活の中で大人たちから暴力や虐待を受ける危険と隣り合わせです。子どもたちの中には、すでに大人からの性的虐待や暴力で傷つき、トラウマを抱えた子もいます。子どもたちの日常生活環境=路上生活では、薬物やHIV感染などの危険性もあります。そのような困難な生活環境は子どもたちの大切な成長期過程・人格形成過程においてさまざまな影響をもたらします。

このような背景を持ったDICに来る子どもたちは、自分の身を守るため、日々の路上生活で遭遇する危険を自らが察知し、回避するスキルを身につける必要があります。DICのスタッフは、困難な生活環境の中でも、子どもたちが薬物・犯罪などに手を染める事無く、道を外れることなくバングラデシュ市民の一員として成長をしていってほしいと強く願っています。
このような理由から、ライフスキルセッションはDICの活動の中でも、子どもの成長のために大変重要な活動として位置づけられています。

DICの子どもたちの性格の特徴として、厳しい路上生活で生き延びるための日々を送る中で、自己主張が強くなり、けんかをよくするということが挙げられます。また、ストリートチルドレン同士のけんかに巻き込まれることもあります。子どもたちに良い対人関係を築くためのコミュニケーションの仕方を温かく教えてくれる大人が側にいないのです。

 

ライフスキルセッションで路上生活を生き延びるための「交渉能力」を身につける

人間関係の「争い」を回避することや、自分の主張をけんかや暴力に訴える以外にも、「交渉する」という方法もあるということを知ってもらう目的で、今月は「交渉能力」についてのライフスキルセッションを20人の子どもたちを対象に行いました。

ストリートチルドレンへのライフスキルセッションで効果的なモデュール(構成要素)はロールプレイングとされています。ロールプレイングとは、実際に子どもたちが、スタッフから役割を振り分けられて、演技をし、それを見た後で演技について話し合いをしながら考えるという方法です。

ロールプレイングでは、DICで子どもたちに大人気のおもちゃを使って遊んでいる途中で口論になってしまう、という設定で2つの演技をしてもらいました。

まず一つ目の演技は、口論になった時にけんかがエスカレートしてしまうというパターンです。そして二つ目は、口論が始まった時に話し合って決めるという演技です。

けんかが始まる前(演技)

けんかの前(演技)

 

けんかの演技

けんかが始まった!(演技)

 

けんかになりそうな時に仲介に入るロールプレイング

けんかになりそうな時に仲裁に入るロールプレイング

 

この後グループに分かれて、どちらが良かったと思うか、どうして良かった・悪かったと思うか、何が違っていたかを話し合い、さらに、DICでゲームをして遊んでいるときに、けんかにならないようにするにはどうすればいいと思うか、解決策を話し合い紙に書き出しました。

話し合いの様子

話し合いの様子

 

そしてグループの代表の子が、書き出した内容を全員の前で発表しました。

プレゼンテーション

プレゼンテーション

 

子どもたちからの意見として、「話し合いで解決できずに口論がエスカレートした理由は、暴力的な言葉使いをしたことだ」という意見があり、けんかをした結果、怪我をしたり、死んでしまったりすることもある、という意見がありました。

子どもたちからは、

  • 年上は年下に優しく接して、年下の子は年上の子を尊敬する
  • 相手を怒らせるような汚い言葉使いはしない
  • 自分たちで解決できないことはスタッフに早く相談する

という解決策を考えることができました。

 

最後にDICのスタッフから、「交渉する」ことの大切さを子どもたちに伝えました。

「交渉能力」は周りの人とよい関係を築くために大切なスキルで、けんかや対人関係に問題があっても、それを最小限にすることができます。またけんかをしている時には自分のことばかりだけではなくお互いにとって何が良いかを考えることも大切です。そして自分たちで解決できない事があれば、スタッフに仲裁や助けを頼んでも良いということを伝えました。

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発表を真剣に聞く子どもたち

 

このように、DICの子どもたちは自らの力で危険回避や問題解決をしなければいけないという厳しい環境で生活をしていますが、何か問題があれば、スタッフが子どもたちの助けになりたいというメッセージを常に伝えるようにしています。

これからもDICスタッフ一同、子どもたちの大切な成長期過程に関わる大人として、彼らが周りの人とより良い関係を築き、バングラデシュ市民の一員として成長してくれることを願いながら、日々寄り添っていきたいと思います。

 

ワークショップの合間。スタッフのひげをさわる子どもたち。兄弟のように甘えている。

ワークショップの合間。スタッフのひげをさわる子どもたち。兄弟のように甘えている。

 

子どもたちが、あなたのサポートを必要としています


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例えば1,500円のご寄付で、KnKほほえみドロップインセンターのストリートチルドレン15人に朝食と昼食を提供できます。「毎日の力!50円」にご参加いただくことで、年間180人のストリートチルドレンを栄養面でサポートできます。
KnKへのご寄付は寄付金控除の対象となり、税制上の優遇措置を受けられます。

※ バングラデシュ、ダッカの「KnKほほえみドロップインセンター」運営は、株式会社味の素、フェリシモ地球村の基金からの助成と日本の皆さまからのご寄付で成り立っています。

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